2021 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ気液界面反応場における溶媒和電子の診断と反応過程の解明
Project/Area Number |
21J11632
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲垣 慶修 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 水和電子 / 溶媒和電子 / プラズマ・液体相互作用 / プラズマ液体相互作用 / 光励起脱溶媒和 / レーザー誘起脱溶媒和 / 水ジェット |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマと接した水の界面近傍層における反応過程については未解明である点が多い。解明を阻んでいる要因の1つに、液相側界面近傍層に局在する水和電子の検出方法が確立されていないことが挙げられる。そこで、申請者は、光励起脱溶媒和とよばれる現象を利用して、プラズマ誘起水和電子の検出と診断を試みている。昨年度までに、液体電極大気圧直流グロー放電の水陰極にNd:YAGレーザーを照射すると一時的に放電電流が増加すること、放電電流の増加が光励起脱溶媒和によるものであることを明らかにしている。 2021年度は、プラズマと相互作用することで発生した水和電子の深さ方向分布を調べるため、液体陰極に色素レーザー光を照射、波長掃引した。3.4-4.4eVの範囲で光誘起脱溶媒和信号の光子エネルギー依存性(光電子スペクトル)を取得することに成功した。加えて、水和電子が脱溶媒和して気相まで輸送される過程をモンテカルロシミュレーションで再現することで、光電子スペクトルが水和電子の存在する深さによってどのように変わるか求めた。これらを比較したところ、完全に水和した電子が液面からおよそ9nmの深さに局在化していること、プラズマと液体界面に部分的に水和した電子(“半水和電子”と呼ばれている)が存在している可能性が示された。 また、プラズマから輸送された電子が界面近傍層で溶媒和する様子を観察したいというニーズから、低ガス圧プラズマ/水ジェット装置における水和電子の検出実験を開始した。初期的な成果として、水ジェットにNd:YAGレーザー光(266nm、355nm)を入射した際に、低ガス圧プラズマと水ジェットの間に一時的な電流変化が生じることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初計画していた光電子スペクトル取得の実験に加えて、予定になかったモンテカルロシミュレーションを実施した。このことで、単に光電子スペクトルだけでなく、上で述べたようなプラズマ誘起水和電子の具体的な特性に迫ることに成功しており、当初の計画以上の成果を上げている。また、当初の計画では、本年度水和電子の反応周波数を計測することとなっていたが、上記の通り2022年度に計画していた低ガス圧プラズマ/水ジェット装置の実験を優先して実施している。反応周波数計測の実験には着手していないものの、低ガス圧プラズマ/水ジェット装置の実験では初期的な成果を上げており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に取得した低ガス圧プラズマ/水ジェット装置の実験で得た電流変化は、水和電子の光励起脱溶媒和に起因するもの、プラズマ中の負イオンの光脱離に起因するものが同時に見えている。2022年度はこの電流変化を分離し、水和電子由来の信号のみ取り出すことを目指す。加えて、2021年度やり残した反応周波数の計測も目指す。
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Research Products
(5 results)