2021 Fiscal Year Annual Research Report
クリーンエネルギーの利用による,生体内反応模倣型ペプチド合成系の開発
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21J11675
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
永原 紳吾 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ペプチド合成 / 有機電解反応 / ホスフィン / 液相合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペプチドは、化学合成可能かつ、標的特異性が高く、副作用の小さい医薬品の代表候補として注目を集めている。しかし、従来のペプチド合成法では大量の廃棄物が生じることが問題となっており、その一因として縮合剤由来の副生成物が挙げられる。縮合剤はペプチド結合形成反応を効率的に進行させるが、反応後に生じる副生成物は回収および再利用が難しく、アミノ酸を伸長するごとに廃棄物として蓄積しているのが現状である。この課題に対し、申請者は縮合剤をリサイクルし、縮合剤由来の廃棄物を削減できるペプチド合成法を開発することとした。具体的には、トリフェニルホスフィン(Ph3P)を電気で活性化することで縮合剤として利用するペプチド合成系の開発に取り組んでいる。この反応では、トリフェニルホスフィンオキシド(Ph3PO)が副生成物として生じるが、Ph3POからPh3Pへの変換は様々な方法で達成されているため、電気化学的ペプチド合成法とPh3POの回収法を確立できれば、縮合剤をリサイクルできることが実証できる。これまでに、生体内のペプチドを構成するアミノ酸基本20種すべてに適用可能なペプチド合成系の確立に成功している。さらに、C末端アミノ酸のカルボン酸の保護基を長鎖アルコキシ鎖を有するベンジルアルコールとすることで、目的のペプチドがシクロヘキサンやTHF,ジクロロメタンといった溶媒には溶解し、アセトニトリルのような極性溶媒では沈殿するため、濾過操作のみでペプチドを精製できるようになった。上記の合成・精製系はオリゴペプチド合成に応用可能で、すでに乳がんや前立腺がんの治療薬として用いられている、アミノ酸9残基から構成されているリュープロレリンの合成に成功した。また、モデル反応において、Ph3POを高純度(95%以上)、高収率(91%)で回収するプロセスの開発にも成功しており、本合成系でPh3Pがリサイクル可能な縮合剤となりうることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内を構成するアミノ酸基本20種すべてに適用可能な、Ph3Pを縮合剤として利用する電気化学的ペプチド合成系の構築を達成した。また、反応後の混合物中からPh3POを高収率・高純度で単離することに成功し、Ph3Pがリサイクル可能な縮合剤となりうる可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
適用範囲探索の結果、アミノ酸のうちプロリンを縮合する際の反応効率が低く、他のアミノ酸と比較してより多くのPh3Pと通電を要するうえに、加温が必要であった。これを踏まえ、プロリンを縮合するジペプチド合成をモデル反応とし、ホスフィン誘導体のスクリーニングを行う。その中からPh3Pよりも高効率で反応を進行させることのできる誘導体を選出し、より高効率なペプチド合成系の構築を進める。反応条件の最適化後、プロリンが連続する配列を含むオリゴペプチド合成に取り組み、反応効率が向上したことを実証する。また、電解ペプチド結合形成反応後に生じるホスフィンオキシドを回収し、還元反応に供することでホスフィンが得られ、縮合剤のリサイクルが可能であることを確認する。
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Research Products
(4 results)