2021 Fiscal Year Annual Research Report
Tm添加媒質を用いた波長2μm帯超短パルスレーザーの開発
Project/Area Number |
21J11719
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
鈴木 杏奈 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | モード同期レーザー / 超短パルス / フェムト秒 / Tmレーザー / カーレンズモード同期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中赤外域における広帯域コヒーレント光源の開発を目的とし、広帯域光発生のドライバーとなる波長2 μm帯超短パルスTmレーザーの短パルス化を試みる。Tmは高出力・高効率動作に優れたレーザーであるが、一方で利得帯域が比較的狭いため広帯域なスペクトルを有する超短パルス発生には本質的に不向きであり、特に100 fs以下となるような超短パルス発生は困難であった。そこで本研究では2つの異なるアプローチによりTmレーザーの利得帯域の拡大を図り、従来のTmレーザーの限界を大きく超えた50 fs以下の超短パルス発生を実現する。 第一の手法として、複数の異種利得媒質を同一共振器内で利用する複合利得共振器を採用した。この手法では、波長の異なる利得帯域を線形に結合することで単一の利得媒質のみでは得られない広帯域な利得を可能にする。これにより、Tm:Lu2O3およびTm:Sc2O3を同時に用いたカーレンズモード同期レーザーを開発し、Tm固体レーザー最短となる41 fsのパルス幅を実現した。これまでTmファイバーレーザーにおいて40 fsのパルス幅が実現されているが、これに比べ2倍以上の平均出力が得られており、増幅器の利用によるさらなる高出力化、および非線形波長変換による広帯域光の実現が期待される。 第二の手法として、広帯域な利得を有する新規Tm添加結晶の開発を行った。レーザーのホスト材料の一種であるsesquioxideは混晶にすることで不均一広がりによるスペクトルの広帯域化が生じ、超短パルス発生に適した性質を示す。また、混晶にすることで材料の融点が下がり、これまで困難であったsesquioxideの高品質な大型結晶の育成が可能となる。こうした特性を用いて大型単結晶育成に用いられるCzochralski法によりTm添加混晶sesquioxide結晶を作成し、結晶工学的・分光学的評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異種利得媒質を同時に用いる複合利得媒質を用いたレーザーの開発は予定通りに研究・開発を進め、想定通り広帯域な利得を利用したモード同期レーザーを実現し、Tm固体レーザー最短パルス幅を記録するに至った。新規結晶開発に関しては、2021年10月よりドイツLeibniz-Institut fuer Kristallzuechtungに滞在を開始し、サンプルの作成及び結晶工学的・分光学的特性評価を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
Leibniz-Institut fuer Kristallzuechtungにて開発した新規結晶を用いたレーザーの開発および結晶の品質向上のための育成条件の最適化を行う。 まずは連続発振実験、波長可変実験を行いレーザー結晶の特性評価を行う。それらの評価を元にレーザーの性能向上を目的とし、結晶の損失低減、特に内部応力による偏光回転を低減するため、結晶の育成装置、育成パラメータの最適化を行う。 また、作成したレーザー結晶を用いてカーレンズモード同期レーザーの開発を行い、超短パルス発生を試みる。これにより、昨年度に開発した複合利得媒質を用いたカーレンズモード同期レーザーと出力特性や装置としての実用性を比較する。
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