2021 Fiscal Year Annual Research Report
アレルギー性疾患の治療応用を目指した、PGD2/CRTH2シグナルの機能解明
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21J11720
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木田 美聖 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | アレルギー / IgE / 脂質メディエーター |
Outline of Annual Research Achievements |
私はアレルギー反応におけるPGD2/CRTH2シグナルの機能解明を目的に研究を行っている。まず、アレルギー反応の成立に必須な抗原特異的IgE抗体の産生量について野生型マウス(WT)とCRTH2受容体を欠損したマウス(Crth2-/-)を用いて測定を行った。抗原として卵白アルブミン(OVA)を用い、皮内投与によって各系統のマウスに感作を行った後、血清中に含まれるOVA特異的IgE値を測定した。その結果、WTに比べてCrth2-/-でOVA特異的IgE値が低いことが分かった。また、感作後にOVAを経口投与することで食物アレルギー症状を惹起したところ、WTに比べてCrth2-/-でアレルギー反応が低減されることが分かった。次に、OVA感作時におけるPGD2の産生源について検討した。抗原の獲得に重要な樹状細胞に着目し、培養した骨髄由来樹状細胞にOVAを処置した。その後の培養上清を質量分析装置を用いて解析したところ、PGD2が産生されていることが確認できた。最後に、CRTH2シグナルがOVA特異的IgE産生を促進するメカニズムについて、所属リンパ節内の免疫細胞の割合に着目して解析を行った。IgE産生への関与が報告される免疫細胞の割合をOVA感作後にフローサイトメトリーで解析した結果、WTとCrth2-/-で差は見出されなかった。しかし、リンパ節内の細胞から産生されるサイトカインはWTに比べてCrth2-/-で少ない傾向にあり、CRTH2シグナルが免疫細胞の活性化に影響する可能性が分かった。 私はこれらの結果を学術集会にて報告してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画に掲げていたように、抗原刺激を受けた際にPGD2を産生する細胞を特定することができた。また、CRTH2シグナルが抗原特異的IgE産生を促進するメカニズムについて、その一部をすでに明らかにしている。また、2021年度の研究計画に含まれていたCRTH2発現細胞の特定には至っていないものの、これまでにCRTH2発現細胞を特定するために必要な試薬などは準備が整っており、発現解析についての予備検討もいくつか行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、CRTH2発現細胞の特定を行う。これに必要な試薬などはすでに入手済みであり、発現解析に必要な予備検討もすでに行っている。今後はマウス組織を用いて免疫染色やフローサイトメトリーなどの手法によって、CRTH2発現細胞を特定していく予定である。また、2021年度中に明らかにしてきた、CRTH2シグナルが抗原特異的IgE産生を促進するメカニズムについて再現性を確認する予定である。この他に、CRTH2シグナルを標的としてアレルギー反応を抑制する方法の探索も行う。具体的には、これまでに作成してきた食物アレルギーマウスモデルを用いて、CRTH2受容体の阻害薬を投与する経路や時期などによってアレルギー反応の抑制程度に差があるかどうかを確認する予定である。 以上の研究成果をまとめ、学術集会にて発表を行い、さらに投稿論文として発表する予定である。
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