2021 Fiscal Year Annual Research Report
火山噴火における変形や合体をともなう気泡運動の理論的研究
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21J11749
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
丸石 崇史 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 火山 / 玄武岩質マグマ / 気液二相流 / 気泡合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、玄武岩質マグマにおける気泡合体のモデルを構築し、合体による気泡サイズ分布の進化を部分的に計算した。はじめに、2個の気泡の相互作用を記述する運動方程式を導出した。気泡の形状変形を式に組み込むことで、これまでの課題であった、気泡が変形しながら引き合う効果を考慮した。運動方程式を解いて軌道を計算することで、気泡の衝突しやすさを表す衝突断面積の式を得た。この式を用いれば、様々な気泡サイズやマグマの粘性において、気泡が合体する頻度を評価することが可能である。今回得られた式によって、気泡が合体する時間スケールはおおよそ、気泡サイズが1cm以上の場合、気泡サイズの6乗に反比例することが判明した。これにより、玄武岩質マグマにおいて気泡が10秒未満で急速に合体する可能性が示唆された。 つぎに、得られた衝突断面積の式を用いて、気泡のサイズ分布の進化を記述する気泡合体方程式を導出した。そして合体方程式を解くことで合体ダイナミクスの性質を調べた。今年度は、気泡サイズ分布の方程式が単純化して計算が容易である、気泡サイズが1cm以下の場合に着目した。その結果、気泡サイズ分布は有限時間でベキ分布に進化することが判明した。また、気泡間の流体力学的相互作用により、サイズ空間上のフラックスが一定となるカスケード的な合体機構が引き起こされることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の前半には、当初の予定通り、本研究の基礎となる浮力を受ける気泡の運動方程式を定式化した。成果はPhysics of Fluids誌に掲載された(Maruishi and Toramaru, 2022)。 本年度の後半には、当初は大型計算機を用いて複数気泡(数千個)の運動方程式を解く予定であったが、気泡合体の時間スケールが短いために、計算コストが事前の見積もりを上回ったため、統計分布を計算する方法に変更した。その結果、当初の予定通り、複数気泡の運動を記述するモデルを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、導出した運動方程式を天然噴出物に応用して、気泡の集積構造の成因を解明する。 まず、気泡の集積構造が報告されている国内の火山を調査する。現段階では、溶岩流に20cm程度の巨大気泡があると報告されている、富士山を予定している。調査では、気泡の幾何学的変数(サイズ、形状、位置)に着目して、その空間的分布を記録する。壁面をデジタルカメラで撮影し、複数枚写真を組み合わせて数mスケールの画像を作成する。また、溶岩の岩片をいくらか採集する。調査後には所属研究室の設備を用いて、溶岩流の密度と粘性を計算する。次に、調査で得られた溶岩流と同様の物理条件のもとで、これまでに構築した気泡の運動方程式を解く。それによって天然の物理条件で集積構造が形成されるメカニズムを明らかにする。最後に、溶岩流中の気泡集積構造について論文を執筆・投稿する。
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Research Products
(2 results)