2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J11836
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
門田 美貴 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 公共空間の私化 / 財産権の社会的拘束 / 私有地における集会 / 排除権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、ドイツにおける「財産権の社会的拘束」論を軸に、私化された公共空間における集会の実施を当該空間の所有者に受忍させる規範的理論の定立の作業を行った。ドイツにおいて財産権には社会的義務ないし社会的拘束が伴うことが前提とされており、近時、私人所有の公共空間において集会を保護する際に、この概念の有用性が注目されている。しかしながら、この拘束が、憲法内在的拘束なのか、それとも法律を媒介した拘束にすぎないのかについては現在まで争いがある。これに対して、私有地での集会を保護する法律が存在しない現在、法律を媒介とした拘束に終始する義務を導くのでは十分に集会を保護することができないとの問題意識から、憲法内在的拘束であることの論証を行うこととした。もっとも、ドイツにおいても法律によって具体化されることを待たない憲法内在的拘束であると十分に理由づける研究はなく、「財の稀少性」を極めて簡潔に挙げるものが多くみられる。そこで、憲法上、社会的拘束論はおろか、財産権規定のないアメリカにおいて、財産権の社会的拘束を導出する見解を参照した。財産権とは、個人の自律を物質的側面から支える重要な権利である。しかしながら、このような個人にとって重要な権利は、ある財の排他的な使用を可能とする点で、他者の自由の縮減を必然的に伴う。このような他者の自由の縮減は財産権に内在しており、このようなジレンマを解決するために、財産権の社会的拘束が課されるとの論証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を予定していた、ドイツおよびアメリカの「私有地における集会」をめぐる議論の比較および提示、および次年度の研究を予定していた「財産権の社会的拘束」の論証をすでに本年度のうちに終えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
「財産権の社会的拘束」で研究者が得た知見に関する英語論文をロージャーナルに投稿し、公表することを目指している。加えて、「公共空間の私化」のみならず、「公共空間の監視」に焦点を当て、監視による間接的・事実上の空間使用への干渉に対して憲法学的保護を与えるための試論を提示することを試みる。
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