2021 Fiscal Year Annual Research Report
Innovative Drag Reduction Technology using 3-D Effect of Gas-Liquid Two-Phase Turbulent Boundary Layers
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21J11854
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尹 桐翊 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 摩擦抵抗低減 / 気泡力学 / 傾斜条件 / 超音波計測 / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
傾斜面や曲面を含む三次元船体表面における空気潤滑作用についての体系的なラボスケール実験調査により下記の実績を獲得した. 1. 時空間高解像度超音波ドップラー流速分布測定法の開発により、乱流構造、渦度等気液二相流の重要な情報を取得できるようにした.既存の超音波流速計測技術では液相内一方向の速度しか取得することができないため、乱流境界層で得られる情報は制限された.本研究では速度のベクトル成分を算定できるようにする超音波トランスデューサーの配列を提示して、計測システムを構築した.構築システムの妥当性検証とデモンストレーションにより平均3%以内の誤差で機能する超音波計測システムの開発を完了した. 2. 曳航水槽実験により気液間相互作用を明瞭化し気泡の運動をモデリングした.傾斜角によって境界層の厚さが変化し、高い曳航速度では気泡の運動は境界層内の液相流速によって支配される.しかし、低い曳航速度では浮力が支配的となり、気泡の大きさと合体にも影響を与える.上記の結果を基に傾斜板下気泡速度を予測できる経験式と気泡の抗力係数モデル式を提案した. 3. 傾斜乱流チャネル装置を使用して低い傾斜度での気泡形状の変化を観測し、その変化を決定付ける力の成分を分析した.上向きの傾斜条件で挙動する気泡の形状は水平条件と大きな差異が生じなかったが、下向きの傾斜条件での気泡形状が周期的に変形した.変形メカニズムを究明するため気泡に作用する揚力、浮力、表面張力の平衡方程式を立て、揚力係数を算出した.そして揚力係数はHydrostaticとHydrodynamic forceによって決定されることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
曳航水槽を使って傾斜平板下境界層内気泡挙動に対するメカニズムを究明した.傾斜角度による境界層内流速分布の変化を定量化し、これが気泡の挙動に及ぼす影響を分析した.曳航速度による気泡の移流速度とボイド率の変化の関係から、気泡の挙動は浮力と液相流速によって支配されることを明らかにした.この結果を基に、気泡直径による分類ごとに気泡抗力係数を算定し、数値モデル式を提示した.この成果はInt. J. Multiphase Flowに掲載された. 超音波を用いた速度ベクトル計測技術を開発した.一般に超音波を利用した乱流計測は時間平均の主流方向速度のみの情報を取得でき、渦度場やレイノルズ応力といった他の重要な情報を得ることができなかった.計測できる情報の高次化のため超音波トランスデューサーの配列、信号処理方法などを最適化し、速度ベクトル計測システムを構築した.開発されたシステムのデモンストレーションとして円管内乱流および円筒後流の計測を実施した.この成果はMeas. Sci. Tech. に掲載された. -15度から+15度の範囲で傾斜乱流チャネルにおける気泡の運動特性を調査した.開発された超音波計測技術と工学可視化計測技術を融合して気泡挙動の計測を行った.気泡の速度は浮力の影響により下向きの傾斜条件では減速、上向きの傾斜条件では加速することが確認された.特に、下向き傾斜条件では気泡の形状が周期的に変形することを発見した.これに対する追加の解析として気泡に作用する揚力、浮力、表面張力の平衡方程式を立て、揚力係数に対する数値モデル式を提示した.この成果はPhys. Fluldsに採択された. 上記の成果から傾斜面での気泡抵抗低減物理メカニズムを明瞭化した(DC2全体の研究成果の七割達成).これは次年度の研究目標である“三次元傾斜壁面での気泡挙動の全容解明”を成功的に達成できる根幹となる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究では、申請者が構築した傾斜チャネルを利用して-20度から90度の傾斜角度における気泡挙動の数値モデルを構築し、船舶の船首・船尾・側面の曲率を持つ壁面において気泡が抵抗低減に与える影響を予測することを可能にする.この過程で、初年度に開発した超音波計測技術をさらに発展させ、液膜の厚さ、レイノルズ応力、ボイド率など抵抗低減を決定する重要な変数を計測できるAdvanced Ultrasound Measurement Systemを開発する.本成果は、気液二相流計測に対する技術公開用としてFlow Measurement and Instrumentationに投稿する.
傾斜条件での気泡形状の変化に伴い、単一気泡周辺の液状流動も変化することが予想される.本研究では傾斜角度に応じて変化する気泡のダイナミクス(抗力、揚力等)の中で、レイノルズせん断応力の増減に最も強い影響を与える因子を特定する.以上の結果から船舶抵抗低減で重要な気泡の滞留時間、気泡膜の形成、下流の持続性、最大抵抗低減率を予測する方程式群を打ち立てる.上の成果は船体傾斜面下抵抗低減に対するデータベースの提供としてExperimental Thermal and Fluid Scienceに投稿を予定する.
抵抗低減メカニズムに対する理解に基づき、様々な流動条件の再現が可能な高速チャネルを利用し傾斜面および曲面での空気潤滑試験を実施する.開発を完了した計測部(UVPとUPE)をこの実験に適用する.この成果から、流動様式の数理モデルを検証・発展させ、様々な形状における船舶摩擦抵抗低減の予測・診断システムを完成させる.これらの成果は、空気潤滑法の新展開として Journal of Fluid Mechanicsに、実船条件での抵抗低減特性の解明として、Ocean Engineeringにそれぞれ論文投稿する.
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Research Products
(7 results)