2021 Fiscal Year Annual Research Report
代数曲線のm次可解Grothendieck予想について
Project/Area Number |
21J11884
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 永悟 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 遠アーベル幾何学 / エタール基本群 / Grothendieck予想 / m次可解Grothendieck予想 / 最大m次可解商 |
Outline of Annual Research Achievements |
数学の一分野である遠アーベル幾何学には、Grothendieck予想と呼ばれる予想が存在する。これは「遠アーベル代数多様体はそのエタール基本群から群論的に復元される 」というものであり、簡単に言えば「方程式の解の情報は、それに付随するある種の代数構造を調べる事により完全に知ることが出来る」というものである。代数方程式の解は数学では常に重要な研究対象であり、その情報を扱いやすい代数構造に落とし込めるという点で、Grothendieck予想は数学的にも応用上も重要である。ここで「遠アーベルという言葉の定義はまだ得られていないが、Grothendieckが初期に予想した双曲的代数曲線の場合については、中村博昭氏(1990年)、玉川安騎男氏(1997年)と望月新一氏(1999年)によって既に解決され現在は定理となっている。 Grothendieck予想に出てくるエタール基本群は複雑な代数構造であり、その代数構造をより解析しやすい形に出来ないかという問いが長年考えられてきた。現在ではその問いの一つの回答としてm次可解Grothendieck予想というものが構築されている。具体的には「Grothendieck予想に現れるエタール基本群をそのm次可解化に取り換えても予想は正しい」という予想である。本研究はこの予想を調査するのが目的であり、現在はアフィン双曲的代数曲線に対してm次可解Grothendieck予想を肯定的に解決し、また残っている固有双曲的代数曲線についても有望と思われる手法を一つ得ている。これらの結果の一部については``The Japan Europe Number Theory Exchange Seminar 2021"での講演を行うことにより、自身の研究成果の周知に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」でも既述したように、現在申請者は「アフィン双曲的代数曲線のm次可解Grothendieck予想」を肯定的に解決しており、またそれらについて国際集会で講演を行うことにより自身の研究結果を広く周知させるよう努めている。 アフィン双曲的代数曲線の本予想についての肯定的な解決が本年度の最終目標であったが、申請者の本年度の研究活動ではさらに有限体上の(ほとんど全ての)アフィン双曲的代数曲線に対し考えうる最善の形でm次可解Grothendieck予想を肯定的に解決することに成功している(ここで「考えうる最善の形」とはm≧2に対するm次可解Grothendieck予想を指す)。この形でのm次可解Grothendieck予想の肯定的解決は申請者以前の研究では中村博昭氏の1990年の結果しか存在せず、今回の結果は今後のm次可解Grothendieck予想の進展への重要な指標となるものであると考えられる。また、「素体上有限生成な体上のアフィン双曲的代数曲線のm次可解Grothendieck予想」についても最善に近い形で肯定的に解決できており、これらの結果は現在投稿予定である。さらに、現在まだ残ってしまっている「固有双曲的代数曲線のm次可解Grothendieck予想の肯定的解決」についても既に有望と思われる手法の構築に着手することが出来ており、その手法の構築が出来た暁には本研究の最終目標である「双曲的曲線に対するm次可解Grothendieck予想の完全な解決」が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題は二つ存在し、具体的には「1、アフィン双曲的代数曲線のm次可解Grothendieck予想の最善の形での肯定的解決」と「2、固有双曲的代数曲線のm次可解Grothendieck予想の肯定的解決」である。1については「現在までの進捗状況」でも既述したように申請者は有限体の場合に既に肯定的な解決を得ている。2についても既に研究に着手しており、基本的な方針の構成は完了している。 現在申請者は有限体上の1の結果を素体上有限生成な体へ拡張することと2を解決するために「望月新一氏が2007年に開発したcuspidalization」の手法を使えないかと構想しており、この手法の研究を進めること(つまり「cuspidalizationのm次可解化」)が本年度の一つの重要な研究課題である。これが出来た暁には、本研究の最終目標である1と2の解決への道筋は既に完成している。cuspidalizationは本来エタール基本群に対する結果であり、その構成には多くの非可換的な要素が存在したことを考えるに「cuspidalizationのm次可解化」は容易ではないが、cuspidaliationの構成に出てくる非可換性は全て有限次可解的なもので絞められていると考えられるので、したがって「cuspidalizationのm次可解化」は(延いては1、2は)解決できると考えている。 今年度は1,2と「cuspidalizationのm次可解化」を研究対象とし、それらの結果についての論文をまとめ、さらにその結果を国際集会で発表することにより自身の研究の周知に努める予定である。
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Research Products
(1 results)