2021 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジー欠損体を用いた植物体内の遊離亜鉛レベルを感知する新規センサーの探索
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21J11995
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
篠崎 大樹 明治大学, 明治大学大学院農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー / 亜鉛 / 鉄 / 亜鉛欠乏耐性植物 / 液胞内遊離亜鉛イオンセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムにランダムな変異を導入する処理を行ったM2世代オートファジー欠損植物群から亜鉛欠乏耐性を得た個体を選抜する大規模な順遺伝学的スクリーニング系の構築とその運用を行い、解析対象となる変異体を選抜した。選抜個体から抽出したゲノムDNAを次世代シーケンス供し、亜鉛欠乏耐性をもたらした原因遺伝子の候補をピックアップした。 スクリーニング系の構築においては、亜鉛欠乏実験を大規模かつ高精度に行うことが可能な「アレイ水耕システム」を新規に確立、従来の方式で行った場合と比較して、個体数、所要時間、必要予算面の全ておいて処理効率を飛躍的に上昇させることに成功した。続いて、本システムをコンスタントに運用することで、15000個体超のM2植物を亜鉛欠乏スクリーニングに供し、35の亜鉛欠乏耐性ラインを選抜した。さらに、これらの35ラインについて、さらに精密な実験により亜鉛欠乏耐性の程度を比較してクラス分けを行うと共に、ステイグリーン変異体を除外することで、最終的に7ラインへと最有力解析候補ラインを絞り込んだ。この7ラインについて、次世代シーケンス用のDNAサンプルを用意するために、それぞれ戻し交配を行ってBC1F1種子を回収、これを自家受粉させてBC1F2種子を回収した。シーケンス用DNAサンプルは、亜鉛欠乏条件で再選抜したBC1F2植物体各ライン60個体以上から調整し、解析の結果、4ライン分について候補遺伝子の擁立に成功した。これらの候補遺伝子について、遺伝子型を個体ごとに確認することで、次世代シーケンス結果の妥当性を確認すると共に、蛍光タンパク質を付加したコンストラクトを作成し、細胞内局在解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、実験開始前に進捗の予想が困難な順遺伝学的なスクリーニングに取り組み、目的とする亜鉛欠乏耐性植物を複数確立することができた。亜鉛欠乏耐性植物が全く取得されない可能性も想定されるなかで、不確定要素の多いフェーズを事前に想定していた最良のシナリオで突破できた。複数ラインの亜鉛欠乏耐性植物を確保するために、一次スクリーニングに取り組む時間を長めにしたため、全7ラインの解析準備(戻し交配植物の作製とDNAサンプル調整など)を取りそろえるために時間を要したが、次世代シーケンス解析まで予定通りに完遂することができた。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
獲得した亜鉛欠乏耐性植物について、亜鉛欠乏耐性をもたらした原因となっている責任遺伝子の同定を進める。 BC1F2世代の解析により得られた責任遺伝子候補について、個別の解析をさらに進めると共に、BC2F2世代から抽出したDNAサンプルのシーケンス解析を行い、さらに高精度に候補遺伝子の探索を行う。BC1F2世代で候補が得られなかったラインに関しても、BC2F2世代の解析を進め、責任遺伝子を同定していく。 解析候補7ラインのうち、5ライン分についてはBC2F2世代植物を確立済みで、速やかに実験に着手する用意ができている。また、残りの2ライン分に関しても着実に交配および生育が進んでおり、BC2F2世代を取得次第、再選抜およびDNA抽出が可能となる。
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