2021 Fiscal Year Annual Research Report
外部刺激で可逆な構造・物性転換を起こす金属錯体系イオン液体高分子の開発
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21J12056
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
角谷 凌 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / ゲル / 有機金属錯体 / 光反応 / イオン伝導度 / 相挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サンドイッチ型ルテニウム錯体の光反応を利用することにより、外場によるイオン伝導度および粘弾性制御が可能なソフトマターを開発することを目的とする。本年度は、第一に、ルテニウム錯体含有イオン液体を用いたゲルの光反応性を検討した。イオン液体に少量の低分子ゲル化剤を加えることで、イオン液体ゲルが得られた。これらに紫外光を照射すると、ゲルの内部でイオン液体が高粘度のオリゴマー液体または配位高分子に転換した。これにより、より硬いゲルまたはゴム状固体が生成した。光反応生成物を加熱すると、逆反応が進行し、元のゲルに戻った。この光・熱反応に伴い、イオン伝導度および粘弾性を繰り返し制御することができた。 第二に、外場による可逆なゲル形成を目的として、低分子ゲル化剤が配位したルテニウム錯体をカチオンとする塩の光反応性を検討した。この塩はゲル化能を持たず、一般的なイオン液体または有機溶媒に少量加えてもゲルを形成しなかった。ところが、この溶液に紫外光を照射すると、ルテニウム錯体からゲル化剤が放出され、全体をゲル化した。光生成したゲルは、加熱すると元の液体に戻った。このように、金属錯体の光反応によって、低分子の機能性を制御できることを見出した。 以上の系に加え、柔軟な結晶相の開拓を目的として、各種のシクロオクタジエン配位ロジウム錯体を合成した。これらの相挙動および結晶構造を評価した結果、多くが秩序-無秩序相転移を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機金属錯体を用いて、外場による構造・物性制御が可能なソフトマターの探索を進めてきた。今後の展開の基礎となる着実な成果が出ており、進捗状況に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の継続として、光によって低分子ゲル化剤を放出するカチオン性ルテニウム錯体の物質開発を進める。これまでに開発した塩では、イオン液体や有機溶媒をゲル化するために長時間の光照射が必要であった。そこで、低分子ゲル化剤に種々の電子求引性置換基を導入することにより、光反応性を高め、反応時間の短縮をはかる。この分子設計により、ゲル化可能な媒体の拡張も期待される。あわせて、前年度に開発したロジウム錯体について、相挙動の検討を継続する。固体NMR分光を適用して、柔粘性結晶相およびローテーター結晶相の有無を検討する。これらの融解機構を解明し、固相における配位子交換反応を検討する。結果を踏まえ、より分子運動性の高いイオン結晶を設計・合成し、その動的物性、イオン伝導性、および反応性を評価する。このことにより、外場による物性制御が可能な柔軟な結晶相を実現する。
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