2021 Fiscal Year Annual Research Report
強相関効果を考慮した電子構造計算と超伝導の理論研究
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21J12095
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
清水 真 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 超伝導 / 有機超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一段階として、ゆらぎ交換近似(FLEX)を用いた常伝導状態の計算プログラム、および超伝導状態を解析するための線形Eliashberg方程式の計算プログラムの実装を行った。ゆらぎ交換近似および線形Eliashberg方程式は既に確立された手法であるが、本研究の出発点として、計算プログラムの実装は必要不可欠である。本研究の最終目標である「現実物質への適用」を達成するために、この段階から並列化を施し、計算の高速化を図った。 本プログラムを用い、有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)塩の各物質の相違点を議論した。この物質群では、物質によって超伝導転移温度が異なり、2Kから12Kまでの幅を持つ。この研究ではこの多様性を体系的に理解することを目標としている。この1年で行った計算の結果として、常伝導状態の計算では一定の傾向を得ることができた。高い超伝導転移温度を示す物質では、スピン感受率のピークが大きくなるのである。この結果を元に超伝導状態の計算を行い超伝導転移温度について議論したいところであるが、現段階では超伝導状態の計算が完了していない。計算プログラムのさらなる効率化を行い、近いうちに超伝導転移温度の多様性に関する議論を行う予定である。本研究のこれまでの結果は、日本物理学会2021年秋季大会および第76回年次大会にて発表した。 元来の目標は、既存の近似理論を超えた拡張理論を構築することであったが、その前段階でだいぶ時間を費やしてしまった。次年度では、拡張理論の構築を行い、この計算プログラムを発展させる形でコーディングを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ゆらぎ交換近似(FLEX)および線形Eliashberg方程式の計算プログラムの実装に1年を費やしてしまったため。FLEXおよび線形Eliashberg方程式は既に確立された手法であり、その実装は本研究の準備段階でもある。当初の計画では、すでに準備段階を終えて拡張理論の構築を始めている時分なので、上のような進捗状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
FLEXおよび線形Eliashberg方程式の実装は概ね完了した。残りの1年間で、本研究の主題である「動的平均場近似(DMFT)の拡張理論の構築、およびその実装」を行うことになる。本来予定していたような大きな拡張は、1年間では難しい。そこで、FLEXの自己エネルギーにデュアルフェルミオン法を取り込むような形で、まずは簡易的な拡張理論を模索する。
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