2021 Fiscal Year Annual Research Report
数値塑性力学に基づく3次元解析が拓く地盤の支持性能評価法の新たな展開に関する研究
Project/Area Number |
21J12120
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山栗 祐樹 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 地盤工学 / 剛塑性有限要素法 / シェイクダウン解析法 / 3次元解析 / 極限支持力 / 組合せ荷重 / 繰返し荷重 / 地盤補強 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は数値塑性力学に基づく3次元解析により,地盤の支持性能評価の新たな展開に取り組むものである.当該年度では,以下の内容を実施した. (1) 組合せ荷重に対する浅い基礎の支持力解析法の開発と支持力評価:組合せ荷重を受ける浅い基礎の支持力特性を剛塑性有限要素法(RPFEM)で評価するために,基礎構造物と地盤の相互作用を地盤メッシュのみで表現できる解析手法を提案した.提案手法を用いて傾斜荷重を受ける浅い基礎の支持力解析を実施し,調査した結果をまとめた.また基礎と地盤の分離を考慮した解析法として,問題の双対性を考慮し,基礎構造物の運動を変形拘束条件として与え,それに対応する変形拘束力を用いて極限支持力を算出する方法を提案した.さらに円形基礎の支持力問題についても検討し,軸対称問題を適切に表現するためには解析対象領域や境界条件の設定を見直す必要があることが分かった. (2) 補強材で改良した複合地盤の支持力解析法の開発:補強土地盤上の浅い基礎の支持力問題を解くために,従来の補強材強度を考慮したRPFEMを改良し,補強材と地盤間のせん断方向の相互作用力を考慮した解析手法を提案した.ジオテキスタイルで補強した粘性土地盤上の浅い基礎に対して,平面ひずみ条件で3次元支持力解析を実施し,補強材強度や付着強度の支持力改善効果や出現する破壊メカニズムについて報告した. (3) シェイクダウン解析法への拡張:荷重の変動やばらつきに対する基礎構造物の支持特性を評価するために,シェイクダウン解析に必要な線形弾性応力を計算するプログラムを新たに開発した.これにより,これまで開発してきたRPFEMのプログラムをシェイクダウン解析コードへ拡張することができた.また提案手法を用いて繰返し傾斜荷重に対する浅い基礎の支持力解析を実施し,その結果をまとめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述(1)について,傾斜荷重を受ける浅い基礎の支持力解析を実施し,基礎形状,傾斜荷重および水平面内での荷重の載荷方向が支持力特性に及ぼす影響を明らかにした 前述(2)について,当初の計画どおり,補強材と地盤間の相互作用のモデル化およびコードへの実装,開発した数値解析コードによる補強材などの複合地盤の支持力改善効果を定量的に評価することができた. 前述(3)について,最終年度にシェイクダウン解析法への拡張に取り組む予定だったが,当該年度で当初の目標を達成することができた.また開発した数値解析コードを用いて繰返し荷傾斜荷重を受ける浅い基礎の支持力解析を実施した.その結果,粘性土地盤の場合,水平方向の交番繰返しを伴う載荷に対するシェイクダウン限界荷重は極限解析法のおよそ2割から3割しか期待できないこと.砂質土地盤の場合,水平方向の交番繰返しを伴う載荷に対するシェイクダウン限界荷重の水平成分は極めて小さく,粘着力の寄与以外は水平抵抗力が期待できないことが分かった.これらの成果は,応用力学シンポジウムや計算工学講演会で発表する予定である. (1)と(2)に関する成果は,国内誌(応用力学論文集,土木学会)に掲載された.以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は「(1) 3次元解析による地盤支持性能評価の高精度化を図る」と「(3) 荷重変動の影響を考慮するため,シェイクダウン解析への拡張を図る」を中心に取り組む. (1)については,これまで開発した数値解析手法(RPFEM)を用いて組合せ荷重を受ける浅い基礎の支持力特性を調査する.具体的には,軸対称問題である円形基礎に対して偏心・傾斜荷重を載荷した時の極限支持力や崩壊メカニズムを評価する.最終年度では,まず軸対称問題を適切に解くための境界条件を設定できるようにプログラムを改良する.次いで円形基礎について得られた知見を整理した後,より一般的な基礎形状である矩形基礎について調査する. (3)については,当該年度に行った数値実験により,砂質土地盤においてシェイクダウン限界荷重の水平成分は極めて小さいことが分かった.これは基礎構造物の根入れが不可欠であることを示唆するものである.最終年度では,根入れによる水平抵抗を考慮し,シェイクダウン限界荷重に及ぼす影響について調査する.そして,前年度と本年度で得られた結果を取りまとめ,学術雑誌に投稿する予定である.
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