2021 Fiscal Year Annual Research Report
マウス大脳皮質視覚野における微小神経回路の形成メカニズムと機能的意義の解明
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21J12197
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河村 菜々実 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 一次視覚野 / 局所神経回路 / パルブアルブミン / クラスター型プロトカドヘリン |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス1次視覚野2/3層における、PV陽性細胞を中心とした近隣の興奮性神経細胞との2種類の特異的な局所神経回路が、どのような機能的意味を持つのかを明らかにするため、外側膝状体 (LGN) からの投射領域に着目した。LGN投射領域下、または非投射領域下の2/3層の神経細胞は、異なる視覚応答特性を持つことが知られている。さらに、先行研究におけるLGN投射領域および非投射領域のPV陽性細胞が形成する抑制性シナプス応答と、本研究で発見した2種類の特異的な局所神経回路の抑制性シナプス応答は、それぞれ特徴が一致していることを明らかにした。このことからdLGN領域特異的に、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子導入による軸索終末を可視化させることで、実際に2種類のPV陽性細胞分布が、LGNからの投射領域によって異なっているのかを検証した。その結果、先行研究で報告されているような1層へのパッチ状の投射を確認することができた。しかし、実際のwhole-cell記録時にパッチ状の投射を確認することは難しく、LGNからの投射下、非投射領域から狙って記録することはできなかった。また、dLGN領域の隣にある後外側核 (LP) 領域は、dLGNから1層への非投射領域に投射しており、dLGN限局したウイルス感染を行えている確証が持てず、この方法を用いた検証を見直すことにした。 次に、2種類の特異的な局所神経回路形成とcPcdhの関係性を明らかにすべく、マウス一次視覚野2/3層における、PV陽性細胞と錐体細胞のsingle-cell patch sequencingを行った。その結果、細胞種によってcPcdhアイソフォームの発現に特異性があることを発見した。さらに、2細胞が双方向性結合をしているとき、この2細胞に発現しているcPcdhのアイソフォーム種は、シャッフル群と比較して一致する傾向があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画予定である局所神経回路の空間的分布を確認することはできなかった。しかし、「PV陽性細胞特異的なcPcdhγ欠損による影響」と、「細胞間結合関係とcPcdhの発現様式との関係性」の2つの課題に焦点をあてることで、新たな知見を明らかすることができた。)
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Strategy for Future Research Activity |
マウス一次視覚野で確認したPV陽性細胞を中心とした局所神経回路が、PV陽性細胞特異的cPcdhγ欠損により、特異性が消失することが明らかになった。これまで数々の先行研究において、局所神経回路の存在が報告されてきたが、その特異性がどのように獲得されているのかは未だ明らかになっていない。そこで、本研究では今後、cPcdhγに焦点を当てることで、その解明を目指す。本年度では、新たな計画としてPV陽性細胞特異的cPcdhγ欠損による影響を、個体発生や1細胞膜特性・発火特性・層内の近隣錐体細胞との入力応答のレベルから細かく測定し解析を行った。その結果、2/3層のPV陽性細胞が1~6層の興奮性神経細胞から受け取る興奮性入力応答の層特異性が、PV陽性細胞特異的cPcdhγ欠損により乱れる傾向があった。さらに、興奮性神経細胞特異的なcPcdhγ欠損においても同様の傾向があることも、予備実験から明らかになっている。これは、cPcdhγが2/3層から5層への興奮性入力を制御している可能性を示しており、これについて、さらなる検証を行う。さらに当初の予定である、single-cell patch sequencingを行うことで、cPcdhγがどのように特異性を決定しているのか、詳しい解析を行う。
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