2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J12215
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中窪 圭佑 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 水浄化 / 有害元素 / 環境改善技術 / 化学形態別分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. DTC修飾セルロース吸着剤の構造最適化 加熱条件で保存したDTC吸着剤は不安定で、金属吸着パフォーマンスが低下してしまう。これを改善するために、5員環、6員環、天然環状イミノ酸であるプロリンを吸着剤の構造に導入した。合成した全ての吸着剤は、比較的高いヒ素吸着パフォーマンスを示した。その中でも、プロリンを導入した吸着剤は、以前我々が開発したDTC吸着剤よりも数%高いヒ素吸着量を示した。熱安定性に関しては、従来の吸着剤と比較して向上した。特に、5員環およびプロリン導入吸着剤は、安定性が非常に高く、ヒ素吸着パフォーマンスがほとんど減少しないことを明らかにした。以上の結果から、ヒ素吸着量が最も高く、熱安定性にも優れている、プロリン導入DTC吸着剤を主な研究対象とすることとした。 2. 無機セレンの化学形態別分析法の開発 以前我々が開発したDTC修飾セルロース吸着剤を用いて、無機セレンの吸着挙動を検討した。本吸着剤はpH 8以下で亜セレン酸を選択的に抽出した一方、セレン酸はほとんど抽出されなかった。共存イオン濃度の検討では、亜セレン酸よりも35,000倍も高濃度のイオン存在下でも吸着を妨害しなかった。本吸着剤はセレン酸を抽出しないため、濃度測定できない。そこで、セレン酸を亜セレン酸に還元し、全セレン濃度を求めた後、事前に定量した亜セレン酸濃度を差し引くことで濃度を算出することとした。上記のセレン吸着法を模擬脱硫排水に適用し、液体電極プラズマ発光分光分析という小型の元素分析装置で測定したところ、亜セレン酸およびセレン酸に対して信頼性の高い結果が得られた。よって、無機セレンに対する新規化学形態別分析法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、セレンの化学形態別分析法が2022年度に確立される予定であったが、研究が順調に進み、2021年年度中に完成させることができた。さらに、これに関して、国内・国際学会で発表しただけでなく、論文がTOP10%ジャーナルに採択されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
DTC吸着剤の化学構造式最適化によって、プロリンを導入した吸着剤が良いという結果となった。しかし、この材料は水中で一部が溶解してしまうという、固相抽出剤として大きな欠点を抱えていることが明らかとなった。そこで、今後は高分子化学や有機化学的アプローチで、この材料を不溶化させる。 これと同時に、DTC吸着剤によるヒ素、セレンの吸着メカニズムを明らかにする。具体的な手法として、X線吸収微細構造(XAFS)、X線光電子分光法(XPS)、溶媒抽出によるスロープアナリシスである。XAFSおよびXPSでヒ素、セレンの近傍構造に関する情報を取得し、金属錯体の構造を推察する。また、溶媒抽出で1金属原子を補足するために、いくつの配位子が必要なのかという化学量論量を決定する。
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