2021 Fiscal Year Annual Research Report
MPS法-VOF法CrosswalkによるMCCIに伴う凝固偏析機構の解明
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21J12226
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福田 貴斉 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所事故 / 燃料デブリ取り出し / MCCI / VULCANO VF-U1実験 / MPS法 / 数値流体解析 / 多相流 / 伝熱流動 |
Outline of Annual Research Achievements |
数値流体解析手法の一種であるMoving Particle Semi-implicit (MPS)法を用いて原子炉過酷事故時に生じる溶融炉心-コンクリート相互作用(MCCI)の現象理解を深めるため、仏国で実施されたVULCANO VF-U1実験を対象に、令和3年度は以下の事項を実施した。 まず、MPS法の離散化誤差低減手法Second-Order Corrective Matrix(SCM)法の導入、高粘性流体固化アルゴリズムと液-液界面張力ポテンシャルモデルの適用及びOpenMP/MPIに基づいたメモリ並列化によりMPS法を高精度・高速化し、MCCIにおける溶融物金属相の局在化と凝固過程の解析を可能にした。さらに、本研究で開発する並列3次元MPS法を用いてVULCANO VF-U1実験の実寸体系のMCCI解析を実施するため、高分解能マルチスケール解析に対応する並列計算機システムを構築した。 その上で、上述の開発手法によりVULCANO VF-U1実験の解析を実施した。それにより、金属相は、溶融物全体が高温の実験初期-中期に低密度の溶融コンクリートに誘起された上昇流によりコンクリート壁に沿い上昇し、溶融物が冷却される実験中期-後期にかけて固相線/液相線温度が高いため先行的に固化した炉心由来酸化物相の層の下で密度差に伴う沈降が妨げられることで、実験後に確認されたような特徴的な凝固分布を示すことが明らかになった。 このように、MCCIの実験後の凝固物分布からのMCCI最中の詳細な伝熱流動を逆推定する試みは世界でも類を見ず、この研究による新たな理解は査読付学術論文誌でも発表された [1] 。 [1] Fukuda, T., et, al., Nuclear Engineering and Design, vol. 385, No. 111537, 2021
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度には、当初の計画通り、MPS法の離散化誤差低減手法(SCM)の導入、高粘性流体固化アルゴリズムの適用及びOpenMP/MPIに基づいたメモリ並列化によりMPS法を高精度・高速化し、VULCANO VF-U1実験における金属溶融物相の局在化と凝固過程の解析を可能にした。 申請時の計画では、2021年度の解析や文献調査を通して、2022年度に同実験の金属相凝固分布の再現にあたって考慮が重要な物理現象を検討し、それらを物理モデル等により考慮する予定であったが、2021年度に開発した並列改良3次元MPS法を用いて同実験の3次元実寸体系解析を実施したところ、同実験で確認されたような特徴的な金属相の凝固分布に似た分布を再現することに既に成功した。また、そのことを通して「研究実績の概要」に示したような特徴的な金属相の凝固分布機構を部分的に明らかにし、これらの成果を学術論文に発表することができた。 さらに、2021年度の解析と並行し日本原子力研究開発機構(JAEA)や仏国CEA、独国KITといった関連研究機関の専門家らとの意見交換を実施することで、現在の改良MPS法において考慮が不十分な現象のうち、特に同実験の金属相凝固分布機構をさらに精緻に捉えるために重要な項目として、 (i) VULCANO VF-U1実験の空間/時間スケールで液-液界面張力を安定的かつ高精度に再現するモデルの開発; (ii) コンクリート熱分解に伴うガスバブルが溶融物に与える影響の考慮; (iii)比較的低密度の溶融コンクリートが比較的高密度の炉心由来酸化物相と混合することで酸化物相-金属相界面が受ける影響の考慮、の3項目を同定し、今後の課題として整理することができた。 以上のように、本研究課題は順調に進展していると評価でき、2022年度の研究の見通しもついている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2021年度の研究を通して整理された以下の課題の解決と、それによる現象理解の体系化及び公開を予定している。 【計画1】仏国CEAにより液-液界面張力が溶融物金属相の流動様式や局在化に重要な影響を与えることが明らかにされた。しかし現在のMPS法において、同実験の時間・空間スケールの計算において正確に界面張力を模擬できるモデルは存在しない。そこで2022年度は、同実験の時間・空間スケールのMPS法解析において液-液界面張力の正確な考慮が可能な界面張力モデルを開発する。 【計画2】2021年度の解析では、MCCIの最中、金属相(~6.4g/cc)は炉心由来酸化物相(~6.3g/cc)から受ける浮力により、その界面が激しく変動していた。しかし、実際には、コンクリートの侵食に伴い発生するコンクリート由来酸化物相(~3.0g/cc)が炉心由来酸化物相に溶け込み、混合酸化物相の密度が減少することで、金属相が受ける浮力が低下し、その分布に与える影響も変化するはずである。そこで2022年度には、MPS法においてコンクリート由来酸化物相と炉心由来酸化物相の混合を考慮する解析を実施し、上述のような混合が金属層分布に与える影響を明らかにする。 【計画3】2021年度には考慮できなかったコンクリート分解ガスバブルが溶融物に与える影響は、粒子で流体を離散化するMPS法には困難な一方、格子で空間を離散化するVOF法であれば容易である。そこで、気相の流動を直接的には解析しないMPS法の簡易ガスバブルモデルを検討中であり、同モデルをVOF法により検証する解析を計画している。なお、COVID-19の影響で仏国CEAへの渡航・滞在が困難になったため、計画を変更し、CEAのVOF法と同等以上の性能を有するJAEAのVOF法(JUPITER)を用いてMPS法のモデル検証を実施する予定である。
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