2021 Fiscal Year Annual Research Report
欧州における政党の越境的連携―左右の『反EU・ポピュリスト』に着目して―
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21J12297
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
冨田 健司 九州大学, 地球社会統合科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ヨーロッパ地域研究 / 欧州懐疑論 / ポピュリズム / 欧州政党 / 欧州議会会派 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度および(繰越年度の)2022年度においては、「なぜ、『ヨーロッパ』においてポピュリストは連携するのか」というシンプルな問いを立てつつ、複数の観点から考察し、それぞれのサブクエスチョンを明らかにしていく方式をとった。
まず、「ヨーロッパの『舞台』とバックグラウンド」と言う観点につき、関連研究や萌芽的な先行研究(McDonnell&Werner (2019)のInternational Populismを含め)などを整理しつつ、EUそれ自体の統合史だけでなく、欧州議会やそれを取り巻く政党制度(「欧州政党(Europarty)」や「欧州議会会派」)などに着目し、それらの形成・発展を、「汎ヨーロッパ的なポピュリズムの連携」の背景として再検討を行い、当該内容をEUSAAP2021にて学会発表し、Asia Pacific Journal of EU Studiesに論文投稿をおこなった。
次に、「連携を可能にするイデオロギーや動機」と言う観点では、彼らポピュリスト、特に急進右派ポピュリストらが「ヨーロッパの守り手」と自己意識し始めていることを踏まえ、正史的で普遍主義的な「ヨーロッパ」とは異なる多様な「ヨーロッパ」像を検討し、関連研究と照らし合わせながら、ワルシャワ(2021年)やマドリード(2022年)での急進右派ポピュリスト政党の会合などでの決議文や彼らの言動などから、彼らの世界観が「狭いヨーロッパ(Parochial Europe)」(Gulmezら(2021))と呼ぶべきものであることを突き止めつつ、当該内容につき国際政治学会の2022年度研究大会で発表した。これらの研究作業を通じて、ポピュリストを巡る言説が「ヨーロッパ vs 国民国家」と単純化できるものではなく、「ヨーロッパ」の枠組みを巡る対立でもあることを示すことに本研究の意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の当初の研究方針においては、欧州に渡航してのフィールド調査・インタビュー調査を前提とした計画を立てており、またリサーチクエスチョンのサブクエスチョンもそれを前提に立てていた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症に伴う甚大な社会的影響と渡航制限が長引いたこと、そしてロシアのウクライナ侵略や円安などの社会情勢の激変もあり、現在に至るまでこれらの調査を実行することができていない。
本研究の課題である、「ヨーロッパではなぜポピュリストは越境的に連携する・しつつあるのか」を明らかにする上では、特に「連携を可能にするイデオロギーや動機」のサブクエスチョンや「ポピュリストと主流派の対抗関係や相互認識」の課題に取り組む必要があり、これらは関係者への直接のインタビューを必要とする(これらは本年度、2023年度に実施を予定している)。
以上の状況を踏まえ、2021年度および2022年度は主に、リサーチクエスチョンをシンプル化しながら、関連研究の整理・再検討し、公表されているポピュリストらの言動の分析(上記の「研究実績の概要」にも示したように)を主に行ってきた。同時並行して、「グローバルな反リベラリズムの文脈での位置付け、域外諸勢力との関連」の観点についても、それぞれの地域の類似現象に関する研究や言説の整理の作業を継続している。米のトランプ系ポピュリストとの関連では、ハンガリーのオルバーン首相などの欧州のポピュリストによる「保守政治活動会議(CPAC)」との関わりなど、注目すべき点が存在することがわかってきた。さらに、「ポピュリストとロシアの関係」についても、ロシアのウクライナ侵略によって変化が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、(新型コロナウイルス感染症による渡航制限の撤廃も踏まえ)、前年度以前に行うことができなかったフィールド調査・関係者へのインタビュー調査を行なって、ポピュリストと主流派双方における「ヨーロッパ」の概念化についてより詳細な調査を行いつつ、ポピュリストと主流派の相互認識にも着目した研究を行っていく予定である。
そして、上記内容を学会報告し、論文投稿を目指す。並行して、今までの研究成果を取りまとめつつ、博士論文の執筆を行う予定である。
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Research Products
(3 results)