2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of fundamental technology in functional laminated glass reactor for photochemical reaction-packaging
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21J12335
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
富田 夏奈 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 多孔質ガラス / レーザー加工 / 遷移金属 / 高温融体 / リアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学反応リアクタの反応場(容器)として用いる多孔質シリカガラス基板に、レーザー局所加熱法を用いて非多孔質状態のパーティション(仕切り)となるような領域を作り出すことに成功した。この非多孔質状態を持つ領域は均質なホウケイ酸塩ガラスで形成されており、多孔質状態の領域と明瞭な境界を持つような加工が達成された。CWレーザーはガラス基板に吸収されガウス分布を持つ温度場を形成するため、レーザー焦点近傍では組織のなだらかな勾配が生じると考えられたが、実際に加工したガラスは多孔質/非多孔質ガラスの境界がステップ状に形成された。明瞭な組織の境界を持つ点はリアクタとしての利用を想定する際、多孔質状の流域の空間的な均一性を担保できるため好都合である。
従来の手法でガラス基板内部に加工を施す場合、主に短パルスレーザーが用いられてきた。本研究で用いたのは近赤外光のCWレーザーであり、ガラス加工コストの低減が見込まれる。透明なガラスは一般的に可視光~近赤外領域の光を吸収しないが、本研究ではガラスに微量の遷移金属元素(Ni, Cu)を添加し、これらのイオンのd-d遷移によりレーザー光を吸収させ、励起電子が放出するエネルギーを熱源とした加工を行った。多孔質シリカガラスの母材となる遷移金属を含有する分相ホウケイ酸塩ガラスに対してレーザーを照射した際、添加したNiOによる発色が緑から茶色へと変化した。高温in-situでガラスに含まれるNiイオンのX線吸収微細構造を測定することにより、高温融液(1000℃以上)でホウケイ酸塩ガラスの分相組織が消失(均質化)し、これに伴いNiイオンに配位する酸素の数が変化し、d-d遷移による可視光域での吸光挙動が変化したことが明らかになった。このことから、CWレーザー照射によって分相により形成されたナノ組織は高温で均質化し、照射後急冷されることで均質状態を保ったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で最も重要である多孔質シリカガラス基板への均質ながらす領域の形成に成功した。さらにこの均質な非多孔質ガラス領域は多孔質ガラス領域と明瞭な境界を持ち、リアクタとしての活用において有利な状態を実現することができる加工手法が確立された。 また、ガラスに添加した遷移金属の微細構造を高温ガラス融液において測定する手法を確立し、従来とは異なり透過法を用いた高温in-situ XAFS測定によって精度の良いスペクトルを得ることに成功した。これによりこれまで困難であった高温下でのEXAFS領域の解析を詳細に行い、配位数や原子間距離を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
パーティション領域を持つ多孔質ガラスを活用した光化学反応リアクタを実現するためには、①ガラス基板の大面積化、②積層構造の形成によるリアクタ化、③実際に液体を流すデモンストレーションを行う必要がある。 また、ホウケイ酸塩ガラスは加熱・冷却中にその分相状態が変化するがレーザー走査によるきわめて短時間での変化挙動は、既往の知識では推測することができない。加工メカニズムを明らかにし、加工の制御性を向上するためには非等温過程における分相挙動の理解を深める必要がある。
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