2021 Fiscal Year Annual Research Report
過酸化トリアシルグリセロールの吸収機序解明から導く疾病との関連評価
Project/Area Number |
21J12390
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 巧 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | トリアシルグリセロール / 過酸化脂質 / 腸管吸収 / 免疫 / 安定同位体 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
過酸化トリアシルグリセロール(TG)の吸収機序解明に向け、(1)安定同位体ラベル化過酸化TGの合成、(2)生体サンプル(リンパ液)における一連の分析手法(抽出法・精製法・HPLC-MS/MS分析法)の構築、(3)胸管リンパカニュレーション試験による吸収評価、これらの課題に取り組んだ。(1)については、脂肪酸メチルエステルを出発物質とし、そのα位水素を重水素(D2)で置換することでD2ラベル体を得た。これをアルカリ加水分解しカルボン酸とした後、酸化およびジアシルグリセロールへのエステル化反応等を行った。反応物をMS/MSにより解析した結果、目的となるD2ラベル化-過酸化TGが生成されていることを初めて確認した。(2)については、液-液抽出法および固相抽出カラムを用いた精製法を整備した。添加回収試験を実施し、リンパ液からのD2ラベル化-過酸化TGの抽出回収率を調べたところ、80%以上の収率を示すことが確かめられ、抽出法・精製法を確立した。加えて、過去に構築したHPLC-MS/MS分析法の各種電圧条件等を最適化することで、D2ラベル化-過酸化TGの高感度定量分析法(定量下限:0.5-10 fmol)の構築に成功した。(3)については、D2ラベル化-過酸化TGを微量(22 nmol)含む試験脂質をラットの胃に投与した。回収したリンパ液を分析した結果、D2ラベル化-過酸化TGは殆ど検出されなかったために、摂取した過酸化TGはそのままの形では腸管吸収されないことが示唆された。対して、興味深いことに、ラベル化していない過酸化TGはリンパ液から明瞭に検出された。本結果や、過去に得られた結果を基に考えると、【生体内でTGが酸化され過酸化TGとなった可能性】、更にこの背景には、【僅かな過酸化TGの摂取刺激が関与した可能性(例えば、免疫応答に伴い活性酸素種が発生したこと)】が新たに想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、研究計画に則ってD2ラベル化-過酸化TGの標準品合成や分析法構築、動物実験等を実施した。その結果、過酸化TGの吸収機序の一端を解明することができたため、順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ液中で見られた過酸化TGは、その後リポタンパク質を介して血中に移行すると予想される。したがって、そうした過酸化TGの血中への流入が生体健康(例えば、免疫系)に与える影響を調べることは重要と考えられる。そこで今後は、実生活レベルの僅かな過酸化TGを摂取した後の血中過酸化TG量や各種生化学的パラメーターの変動を調査する。こうした取り組みを通じて、【吸収機序の知見に基づき過酸化TGが疾病を誘発する要因となり得るか】の解明に繋げていく。
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Research Products
(2 results)