2021 Fiscal Year Annual Research Report
標的タンパク質同定を通じたパラトーシス誘導分子機構の解明
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21J12424
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
横井 健汰 東京理科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | イリジウム錯体 / プログラム細胞死 / パラトーシス / カルシウムイオン / ミトコンドリア / 小胞体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、アポトーシスとは異なるプログラム細胞死として、パラトーシス(Paraptosis)が注目されている。パラトーシスはミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度上昇に由来する細胞質または細胞内小器官の液胞化が特徴として報告されているが、その分子機構の解明は十分に進んでいない。 申請者らは、シクロメタレート型イリジウム(Ir)錯体にカチオン性ペプチド鎖を導入したイリジウム錯体―ペプチドハイブリッド(IPHs)を設計、合成し、IPHsがJurkat細胞(ヒト白血病性がん細胞)の細胞死を誘導し、死細胞中で強く発光することを見出した。その細胞死誘導様式はパラトーシスに分類されること、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度上昇は、細胞質を介さずに小胞体から直接的に輸送されることを報告した。本研究では、IPHsの標的分子の同定を通じた、より詳細なパラトーシス誘導経路の解明を目的として研究を開始した。 IPHsは小胞体からミトコンドリアへ、細胞質を介さないカルシウムイオン輸送を誘導することから、小胞体―ミトコンドリア接触部位のMitochondria-associated membranesに着目し、様々な検討をおこなった。その結果、IPHsは小胞体、ミトコンドリア間の膜融合に起因するカルシウムイオン流入を誘導し、本機構に小胞体、ミトコンドリア膜上のカルシウムイオンチャネルは関与しないことが示唆された。また、同様の分子機構でパラトーシスを誘導する低分子化合物CGP37157を見出した。さらに、パラトーシスを誘導することが報告されている天然物Celastrolを用いたところ、異なるパラトーシス誘導経路の存在が示唆され、Celastrolにより誘導される、従来のパラトーシスをParaptosis I、IPHsにより誘導されるパラトーシスをParaptosis IIとして報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はイリジウム錯体―ペプチドハイブリッド(IPHs)により誘導されるパラトーシスについて、標的分子の同定を通じたより詳細な誘導機構の解明を目的に開始した。本年度の成果として、パラトーシスの特徴の一つであるミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度上昇が小胞体とミトコンドリアの膜融合に起因すること、IPHsと同様のパラトーシス誘導経路を有する低分子化合物を見出したこと、パラトーシスを誘導する天然物はこれらとは異なる誘導経路を有していることを報告した。さらに、この同一のプログラム細胞死で異なる細胞死誘導経路は新規誘導メカニズムを提唱する結果である。また、本誘導メカニズムを解明する過程で、いくつかのタンパク質が標的分子として示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を基に、今後は光親和性標識法を用いた標的タンパク質の同定を行う。申請者らが合成してきたイリジウム錯体―ペプチドハイブリッド(IPHs)が優れた発光特性を有していることを利用し、光反応性基を導入したIPHsを設計、合成した後、細胞内外で標的分子と結合させ、IPHs由来の発光を用いて検出する。さらに、より高活性なIPHsの設計、合成についても行う予定である。
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Research Products
(23 results)