2021 Fiscal Year Annual Research Report
X線自由電子レーザーを用いた時分割ナノ材料合成その場観察法の開発
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21J12479
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤田 知樹 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ粒子合成 / 放射光その場観察 / 解析法の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ナノ粒子合成の放射光時分割実験とナノ粒子の粉末回折データの解析法の開発を精力的に進めた。 超臨界反応場におけるナノ粒子合成の放射光その場観察測定が、大型放射光施設SPring-8の大学院生提案型課題として採択された。獲得したビームタイムでは、液相、気相および超臨界水に対応する9点の温度と圧力の組み合わせにおいて、大きな問題なく合成中のナノ粒子から粉末回折データを測定できた。予備実験の効率化を目的として、測定装置の改良を行った。 放射光その場観察実験で測定したナノ粒子の粉末回折データの解析法を開発した。バルク結晶を想定したリートベルト法による解析では、非等方なサイズや構造欠陥を持つナノ粒子の粉末回折データを表現できないことがわかった。本研究では、任意のサイズ・形状・構造欠陥を持つナノ粒子の構造モデルを作成した。デバイの散乱公式によりモデルから計算した粉末回折データを使用して、実験データをフィッティングした。GPUを使用した計算プラットフォームにより、数十万原子のモデルからでも30分程度で粉末回折データを計算できた。銀およびジルコニアナノ粒子の粉末回折データについて、ナノ粒子のサイズ・形状および原子配列を決定した。この解析手法を、放射光その場観察実験で測定した粉末回折データに対して適用した。合成の開始から60分の反応時間におけるジルコニアナノ粒子の構造変化を決定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定装置とデータの解析手法の開発について、今後の時分割実験とデータ解析で重要になると考えられる複数の進展があった。放射光その場観察実験の測定装置を改良した。試料回りを減圧せずに装置から試料ホルダーを取り外せるようになり、予備実験で合成したナノ粒子の結晶相やサイズを実験室X線回折装置で調べることが可能になった。これにより、これまで目視に頼っていた放射光その場観察実験の測定条件の決定を大幅に効率化できた。 解析法の開発では、デバイの散乱公式により、ナノ粒子のサイズ・形状・構造欠陥が粉末回折データに与える影響を系統的に調べた。その場観察実験で測定したデータのバックグラウンドを解析することにより、合成の反応場である水溶液の散乱を取り出すことに成功した。これにより、合成中のナノ粒子の構造変化だけでなく、反応場の変化についても知見が得られるようになった。液相、超臨界水および気相条件において、溶液の回折データが温度と圧力に対して連続的に変化する様子が見られた。検出器による系統的な回折強度のゆらぎを補正する手法を開発した。この手法を適用することにより、これまでの実験で測定した一部のシグナル-ノイズ比の低いデータについても、解析によりナノ粒子のサイズ変化が得られることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、前年度に得られた成果を論文発表にまとめる。ナノ粒子の粉末プロファイル計算、バックグラウンド解析および強度ゆらぎの補正について、結果の発表と論文執筆を進める。強度ゆらぎの補正法により構造パラメータの抽出が可能になったこれまでの実験データについても、論文発表を目標として、データの再解析を行う。超臨界水中におけるナノ粒子の結晶成長や、ナノ構造と合成条件をつなぐ学理構築に資する研究を進める。
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Research Products
(2 results)