2021 Fiscal Year Annual Research Report
Designing Social Incentive Systems to Promote the Environmentally-friendly Agriculture: An Experimental Approach
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21J12485
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
京井 尋佑 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 農業政策 / エコラベル制度 / 持続可能な農業 / 消費行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Covid19感染症の発生を受け、予定していた実験的手法による調査を取りやめ、アンケート調査により人々の購買行動データを取得し、分析を実施した。調査では、低環境負荷農作物に付与され、消費者の購買行動に心理的動機付けを与えるエコラベルに対する消費者の認知や選好を調査した。エコラベルによる購買行動の変化を通じ、農業者の低環境負荷農業を促す政策的含意を示す。分析により、主に3つの結果が示された。まず、エコラベル(有機JASラベル、特別栽培米ラベル、自己宣言ラベル)に対する消費者認知は依然低いことが示された。消費者のエコラベル認知は、有機JASラベルでは約30%、特別栽培米ラベルでは約20%に留まっていた。また、第三者機関による認証が条件となる有機JAS・特別栽培米ラベルに対して、農業者の自発的宣言のみが要件となる自己宣言ラベルに対しては、約半数の消費者が有効性を疑問視した。また、エコラベル農産物に対する支払意思額が示された。有機JAS・特別栽培米ラベルに対する支払意思額は約1000円、自己宣言ラベルでは約500円と、2倍の差が観察された。さらに、消費者のエコラベルに関する購買行動には多様性が観察された。エコラベル農産物を高く評価し、積極的に購入する消費者がいる一方で、購入をためらう消費者も存在することが示唆された。結果から、低環境負荷農業の実施を促進するための政策的含意が3点導かれた。第一に、消費者のエコラベル認知度を高める取り組みの必要性である。第二に、認知度だけではなく、エコラベルの効果に関する情報提供などにより、消費者のエコラベル購入意欲を高める施策が求められる。第三に、自己宣言ラベルに対する正の支払意思額と、農業者の参加コストの低さを考慮すると、自己宣言ラベルにも有効性が認められる。同時に、消費者と農業者の間の相互信頼性を高める取り組みが重要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、Covid19感染症対応として、対面で実施予定であった実験的手法による調査からWebを活用したアンケート調査に切り替えた。この点において、当初は予期しない事象による研究進捗の遅れが見られた。しかし、アンケート調査を実施することができ、また十分な数の回答者から農産物選択に関する行動データを収集することができた。得られたデータを分析する中で、消費者行動の特徴や、エコラベルに対する認知など、様々な情報を抽出することができている。以上の点を鑑みて、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の分析においては、消費者の購買行動に関するより詳細な分析が必要となる。特に、先行研究では、消費者の行動には空間的なパターンが観察されることが報告されている。その中でも、「環境」のコンテクストを持つ商品に対する消費者行動パターンには、しばしば空間的パターンの存在が示唆され、政策提言やマーケティングにおける活用が議論されている。本研究においても、エコラベル農産物に対する消費者行動の空間的パターンを分析する。そして、パターンが認められるかどうか、認められるのであれば、どのようなパターンかについて明らかにする。そして、得られた結果をもとに、政策提言やマーケティングに関するインプリケーションを導く。
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