2021 Fiscal Year Annual Research Report
南極海洋観測を進化させる:物質パラメタリゼーションの適用と活用
Project/Area Number |
21J12486
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
PAN XIANLIANG 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 南大洋 / パラメタリゼーション / 気候変動 / 海洋淡水化 / 生物生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究項目(1)南大洋物質パラメタリゼーションの開発:南大洋南緯30度以南の全域(表層混合層制約条件あり)に適用できる全炭酸(DIC)と栄養塩(硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩) の水温・塩分・圧力・溶存酸素を説明変数とする多変量線形回帰解析を用いてパラメタリゼーションの構築に成功した。 研究項目(2)リアルタイム海洋観測技術への適用・評価:さらに、南大洋の表層混合層内のDICと栄養塩濃度を制約条件なしにより高精度で復元するために、水温・塩分・圧力・溶存酸素を説明変数とするNeural Network(NN)モデルによる南大洋のDIC・栄養塩パラメタリゼーションを開発した。ここで開発したNNパラメタリゼーションを、南大洋で稼働している自動海洋観測ロボット(Bio-Argoフロート)によって得られた水温・塩分・圧力・溶存酸素データに適用し、南大洋表層のDIC・栄養塩の高分解能時系列データを予測した。これを既存の海洋統合観測データベース(GLODAPv2) と比較することで、同程度の高精度を持つことが確認された。 研究項目(3)南大洋における炭酸・栄養塩のマッピング:項目(2)から得られた高分解能時系列データ群を用いて、南大洋におけるDICと栄養塩濃度の詳細な時空間マッピングを行なった。なお、生物生産量と物質循環変動マッピングについては着手した。 研究項目(4)南大洋の物質循環が気候変動に与える影響:南大洋外洋海域と南極沿岸海域それぞれのDICと栄養塩の多変量線形回帰パラメタリゼーションの構築に取り組み、南大洋系外からのDICおよび栄養塩の負荷量を見積もった。さらに南極縁辺海域における淡水化を見積もった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で構築したパラメタリゼーションの妥当性を評価するために、当初、自分自身が炭酸系物質・栄養塩等の現場データを取得する予定であったが、コロナ禍のため、実施は遅れている。この点については、所属する研究室メンバーに上記のサンプリングを依頼し、このサンプルを用いて、上記パラメタリゼーションの妥当性を来年度(令和4年)に評価する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1 南大洋における炭酸系・栄養塩のマッピング:南大洋南緯30度以南に現在展開されている約200個のBio-Argoデータをパラメタリゼーションに適用することで、南大洋全域におけるリアルタイムな炭酸系・栄養塩物質の動態を把握するための観測システムの構築を行う。得られた時空間高分解能データ群を利用し、南大洋における物質変動(ケイ酸塩と硝酸塩のデカップリング)と生物生産(全炭酸の生物消費量)のマッピングを行う。さらに、本研究で提案した手法を南大洋以外の海域に適用し、全球規模の見積もりを試みる予定である。 2 現場観測データを用いる見積もり結果の検証:所属する研究室メンバーに炭酸系物質・栄養塩のサンプリングを依頼し、このサンプルを用いて、上記パラメタリゼーションの妥当性を来年度以降に評価する予定である。 3 得られた研究成果を国際学術誌、学会などへ発表する。
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