2021 Fiscal Year Annual Research Report
消化管ホルモンを介した水分動態制御機構とその変動要因の定量的解析
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21J12536
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鮒井 悠汰 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 薬物動態 / 消化器毒性 / 下痢 / 消化管水分 / 消化管ホルモン / セロトニン / トランスポーター / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「消化管ホルモンシステムと一連の水分調節機構が関連している可能性」に着目し、主に消化管で産生・分泌される消化管ホルモンを介した水分動態制御機構とその変動要因 (浸透圧、薬剤、腸内細菌など)の分子論的解明ならびに定量的解析を行うことにより、薬物の消化管吸収性/安全性(毒性)に対する高精度予測法の提唱を試みる。 下痢の発現が高頻度で認められる2型糖尿病治療薬metforminを用いて、消化管ホルモンを介した水分動態制御機構の解明を試みた。ラット腸管を用いた検討からmetformin処置群において水分分泌傾向(下痢様症状)と同時に、管腔内5-HTレベルの上昇傾向が観察されたことから、当該年度は、消化管ホルモンの一つであるserotonin(5-HT)に着目して検討を行った。5-HTは,脳機能調節と共に、一連の消化管生理機能との関連性が推察されているが、消化管管腔に存在する5-HTの生理的意義、薬物作用/応答性については明らかではない。そこでまず、5-HTに着目した水分調節機構解析並びに5-HTの消化管動態に及ぼすmetforminの影響を評価した。消化管管腔に存在する5-HTは、SERTをはじめとした複数の輸送体を介して再吸収されることが示され、それらの輸送はmetforminにより阻害されることが明らかとなった。また、5-HTの直接的な管腔暴露により水分分泌傾向が観察されたことから、metforminによる消化器毒性(下痢様症状)は管腔内5-HTの上昇に起因している可能性が示唆された。以上より、metforminによる消化器毒性(下痢症状)が、5-HTの消化管内動態変動とそれに伴う水分挙動変動に起因している可能性が示された。現在、消化管内5-HTが影響を及ぼす水分調節メカニズムについて、上皮細胞機能および腸内細菌への影響に着目して検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果から、消化管管腔内における5-HT動態変動が水分挙動に影響を及ぼすことが明らかとなった。消化器毒性(安全性)を適切に評価する上で、消化管内環境を理解することが重要であることが示された。薬物の消化管吸収性/安全性(毒性)に対する高精度予測法の確立に向け、本研究はおおむね順調に進展しており、計画通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
本検討から、医薬品による消化器毒性(安全性)予測が、一元的なメカニズムを基にした簡易的な方法論で実現できる程容易なものではないことが明らかとなり、今後、消化管内環境を正確に反映できる評価システムの構築が必要であることが示唆された。したがって、本年度から消化管内環境を反映したin vitro評価系の構築を目指す。加えて、文献並びに本研究成果から医薬品による消化器毒性(安全性)予測を行う上で「腸内細菌」が重要な因子であることが示唆された。そこで今年度からこれまでの検討課題に加えて腸内細菌に着目した研究を遂行し、高精度な予測法の確立を目指す。
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Research Products
(4 results)