2021 Fiscal Year Annual Research Report
環境DNAで切り開く系統地理学:適応放散魚類メバル類における多様性形成機構の解明
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21J12688
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八柳 哲 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 環境DNA / 生物地理 / 種多様性 / メバル属 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により野外調査(沿岸環境DNA試料収集)の実施が大幅に制限されたが、重点的な調査範囲である北海道・東北沿岸における試料については概ね当初の予定通り収集することができた。また併行して、メバル属の環境DNA検出および種判別を目的に設計したPCRプライマーが良好に機能することも確認できたため、次世代シーケンサーを用いた環境DNA分析によりメバル属各種の空間分布推定を行った。現時点で40地点から少なくともメバル属14種が検出され、種組成の非類似度に基づく構造解析の結果、本州・北海道間での違い、さらに日本海側・太平洋側・オホーツク海側での違いと、海域間で顕著に異なるメバル属空間分布パターンが確認された。 環境要因として、緯度経度・水温・海流分布といったデータに加え、沿岸空間の深度・複雑さを地点ごとに指標化したもの、さらに藻場の密度など、メバル属のハビタット利用に影響しうる局所的な要因も含めたデータセットを構築した。これらに基づいて各種の分布規定要因および種多様性の空間パターン決定要因を絞り込むために、空間解析や生態ニッチモデリングを進めている。 またいくつかの種については環境DNA試料から種内変異情報を得られる目処が立ったため、最終年度は上記の生態学的なデータ解析に加えて系統地理学的な解析による進化的動態の推定を行うことで、メバル属の多様性形成・維持機構の理解を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により野外調査(沿岸環境DNA試料採集)の実施が大幅に制限されたが、重点的な調査範囲である北海道・東北沿岸における試料については概ね当初の予定通り収集することができた。 またメバル属の環境DNA検出手法の確立、および実験プロトコルの最適化も完了し、分子実験においても一定の成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
野外調査について、春季から夏季にかけて状況を鑑みながらより広域(東北以南)での採水調査を計画しているほか、分析結果に応じて北海道内にコア地点を選定した上で複数回の局所採水調査を実施する見込みである。これらの計画はいずれも6~7月を目処に完了させる。 分子実験に関しては、2022年度実施計画の最重要課題である環境DNA分析の系統地理学的応用のため、メバル属のいくつかの種を対象に種内変異を検出するための分子ツール設計を進めている。これにより環境DNA試料から種多様性のみならず遺伝的多様性も捕捉したうえで、生態学的・進化学的なデータ解析を組み合わせ、メバル属の多様性形成・維持機構の理解を目指す。
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Research Products
(1 results)