2021 Fiscal Year Annual Research Report
光論理回路の性能を最大限に引き出す設計支援技術の研究
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21J12765
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松尾 亮祐 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 光論理回路の消費電力削減 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画調書に記した光論理回路特有の性質を考慮したグラフ構造とそのグラフ構造を用いた回路最適化アルゴリズムを研究するという方針の基に研究を進めた.これは既存の光論理回路設計手法では主に二分決定グラフ(BDD)が用いられているが,通常のBDDでは光論理回路の性質を十分に表現できておらず光論理回路の性能を最大限に引き出せていないためである.この研究方針では主に大きく二つの成果が得られている.一つ目は,光論理回路の論理ゲートの双対性を利用することで回路の消費電力を大幅に削減可能であること,さらにBDDにinput inverterという属性エッジを加えることで論理ゲートの双対性をBDDで簡潔に表現することが可能になることを明らかにしたことである.この発見に基づきInput inverterを取り入れたBDDを基に論理ゲートの双対性を利用した電力削減手法を適用する手法を回路自動設計(Design automation)分野のトップ会議であるDesign, Automation and Test in Europe Conference(DATE)にて発表した.二つ目は,演算途中で光が捨てられない論理回路を設計するためのグラフ構造の研究である.演算途中で光が捨てられることは回路の消費電力の増大につながるため,上記の研究により回路の消費電力の削減が見込める.演算途中で光が捨てられない回路を設計する場合にはBDDなどの既存のグラフ構造を使用することはできないため,新たなグラフ構造を考案し,その性質を研究した.さらに,変数入力数が3までの全ての関数について最適な回路を列挙してライブラリを作成した.これらの成果を論文にまとめて回路自動設計分野のトップ会議に投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記した光論理回路特有の性質を考慮したグラフ構造とそのグラフ構造を用いた回路最適化アルゴリズムを研究するという方針では当初の期待以上の成果を得られているが,もう一つの研究方針である光論理回路のアプリケーションを検討という方針ではまだ十分な成果が得られていないため,おおむね順調に進展しているという評価をする. 光論理回路特有の性質を考慮したグラフ構造とそのグラフ構造を用いた回路最適化アルゴリズムの研究においては,研究実績の概要の項目でも記したように自動設計技術分野のトップ会議で発表を行ったり,さらに新たな研究成果について論文を投稿する予定であったりと非常に順調に研究が進んでいると考える. 一方で光論理回路のアプリケーションの検討においては,光論理回路を用いることでCMOS論理回路と比べて大幅な性能向上が見込めるようなアプリケーションは今のところ見つけられておらず順調とは言い難い.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた光論理回路の性能を予測するアルゴリズムと光論理回路を最適化するアルゴリズムを組み合わせることにより,設計制約に応じた回路最適化アルゴリズムを構築する.BDDに基づく回路の最適化手法は既に大規模な論理関数に適用可能なものとなっている.しかし,2021年度に考案した演算途中で光が捨てられない回路設計手法の最適化はまだ大規模な論理関数に適用できないものであるため,この手法を大規模な論理関数に適用可能なものに拡張する. 当初の研究計画では,2021年度に光論理回路を用いることで従来のCMOS論理回路と比べて性能向上が見込めるアプリケーションを見つけるとしていたが,このテーマではまだ十分な成果が得られていない.そのため,光論理回路のアプリケーションの検討も引き続き行っていく.加えて,適当なアプリケーションが見つかった際にはそのアプリケーションに合わせて最適化問題を再設定して最適化アルゴリズムを構築する. そして,回路最適化アルゴリズムの研究成果と光論理回路のアプリケーションに関する研究成果をそれぞれ ICCAD などの国際会議や DA シンポジウムなどの国内会議で発表し,論文誌に投稿する.
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