2021 Fiscal Year Annual Research Report
グラム陰性細菌の膜タンパク質挿入機構を模倣した人工細胞の創出
Project/Area Number |
21J12786
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野場 考策 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | リポソーム / ボトムアップ合成生物学 / 微生物工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において、当初はLgtを介したタンパク質の脂質化を利用することでタンパク質をリポソーム膜上に配向することで、細菌の細胞膜構造を再構成するという研究計画であった。しかし、Lgtを膜に挿入する際に、リポソームの大半が壊れてしまうことが研究過程で判明した。そこで、研究計画を一部変更した。細菌の細胞膜構造を再構成するため、リポソーム膜の内葉及び外葉にそれぞれ異なるタンパク質を配向した細菌サイズのリポソーム創出を行った。目的達成のため、過去に報告されているリポソーム作成方法である、Oil in water emulsion法とExtruder法の組み合わせに着目した。これによりリポソーム膜内葉にベンジルグアニン基を修飾した脂質及びSNAP-GFPを、外葉にビオチン基を修飾した修飾脂質及びStreptavidin-Alexafluore 647を配向させた。得られたリポソームの粒子径分布を動的光散乱法によって評価した結果、一般的な細菌のサイズである直径500 nmから2 μmの分布であることがわかった。また、プレートリーダー及びフローサイトメトリーを用いてAlexafluore 647とSNAP-GFP両者の蛍光を評価したところ、これらの蛍光が測定された。SNAP-GFPのみが膜内葉に局在していることを明らかとするため、構築したリポソームに対し、Proteinase Kを外部から処理した。処理した結果、SNAP-GFPの蛍光強度は変化しなかったが、Alexafluore 647のみ蛍光強度が低下した。これらの結果から、膜内外で異なるタンパク質組成を持つ細菌サイズのリポソーム構築に成功したと考えられる。細菌において膜の非対称性は膜タンパク質分泌、シグナル伝達、膜分裂に関連する重要な機能であるため、これらの研究を促進することが期待できる。本研究の内容は論文として投稿する予定である。今後、この細菌の膜構造を再構成したリポソームを用いて、膜タンパク質輸送系を搭載した人工細菌を創出する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Lgtをリポソームに挿入する際にリポソームの大半が壊れてしまうことが研究過程で判明し、一部研究計画の変更を余儀なくされた。しかし、変更された計画は順当に進行しており、上述の研究実績は論文投稿準備まで進行している。本研究成果を推進することで、目的を達成することは十分に可能であると考えている。目的の人工細菌創出にあたって、リポソーム膜上に膜タンパク質輸送系を搭載出来ない可能性がある。この場合、ナノディスクに膜タンパク質輸送系を挿入した上でリポソームと融合させる戦略を取ることで問題解決を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
この細菌の膜構造を再構成したリポソームを用いて、BamD及びBamAタンパク質の膜アンカリング及び膜挿入を行う。膜挿入が行われたかを確認するために、抗BamA抗体を用いた免疫染色及びフローサイトメトリーによる蛍光強度評価を行う。これによって、BamAの膜挿入が確認できたら、外膜タンパク質のモデルとして汎用されるOmpTもリポソーム膜に挿入する。OmpTはエンドプロテアーゼ活性を有しているため、正しく膜に挿入されていればプロテアーゼ活性を有するはずである。これを評価することで、OmpTの挿入を評価する。
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