2021 Fiscal Year Annual Research Report
ムラサキ科植物が生産する薬用化合物の多様性創出機構の解明
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21J12807
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
押切 春佳 信州大学, 総合医理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | シコニン / アルカニン / ムラサキ科 / 薬用植物 / 植物二次代謝 / 生合成 / BAHDアシル基転移酵素 / 分岐鎖アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
一部のムラサキ科植物は高生理活性物質であるシコニンおよびアルカニン誘導体を生産する。立体異性体であるシコニンとアルカニンにそれぞれ特異的なアシル基転移酵素が機能し、多様なアシル基を有するシコニンおよびアルカニン誘導体が生じる。しかし、その組成はムラサキ科植物の種間で異なることから、(1) シコニンおよびアルカニンのアシル基転移酵素の機能と (2) アシル基供与体の供給源と考えられる分岐鎖アミノ酸の代謝機能に違いがあると推測した。本研究では、複数のムラサキ科植物においてシコニンおよびアルカニンのアシル基転移酵素を単離し、機能解析や結晶構造解析により詳細に比較する。さらに、分岐鎖アミノ酸の代謝産物の比較や代謝酵素のin virtoおよびin vivoにおける機能解析を行うことで、シコニンおよびアルカニン誘導体の多様化メカニズムの解明を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ムラサキ科植物7種のトランスクリプトームデータからシコニンおよびアルカニンアシル基転移酵素の候補遺伝子を探索し、計20分子種の機能解析を行った。2タイプのシコニンアシル基転移酵素 (SAT1・SAT2) および2タイプのアルカニンアシル基転移酵素 (AAT1・AAT2) がそれぞれ存在し、植物種を問わず各タイプ内で酵素機能は保存されていることがわかった。このことから、シコニン/アルカニン誘導体組成の種間差はシコニンおよびアルカニンのアシル基転移酵素の機能の違い以外の要因によりもたらされると推測される。さらに細胞内局在解析や遺伝子発現解析により、SAT1とSAT2、AAT1とAAT2の間で機能分担してシコニン/アルカニン誘導体生合成に関与することが示唆された。現在、各タイプのシコニン/アルカニン誘導体生産への寄与を評価するため、ムラサキを用いてノックアウト体の作出を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はムラサキを用いてシコニンおよびアルカニンアシル基転移酵素のノックアウト体をそれぞれ作出し、各シコニン/アルカニン誘導体の生成量を比較する。これにより、in vivoにおける各タイプのシコニン/アルカニン誘導体生産への寄与を評価する。 また、シコニン/アルカニン誘導体のアシル基供与体の供給経路を明らかにするため、トレーサー実験を行う。分岐鎖アミノ酸や関連代謝物を培養細胞に投与し、シコニン/アルカニン誘導体への取り込みを評価する。さらに、分岐鎖アミノ酸代謝酵素などのアシル基供与体の生成に関わると推測される遺伝子の発現プロファイルや配列を植物種間で比較し、アシル基供与体の生産能とシコニンおよびアルカニン誘導体の多様性の関連を明らかにする。
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