2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒアルロン酸結合タンパクを基点とした革新的医用材料開発
Project/Area Number |
21J12834
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大川 将志 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ヒアルロン酸結合タンパク / リンクモジュール / 細胞外マトリックス / バイオマテリアル / 酵素反応 / 再生医療 / 組織工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外マトリクス(ECM)は,細胞が住む“家”であり,ヒアルロン酸(HA)を主成分とするハイドロゲルで ある.ヒアルロン酸にはタンパク質や糖鎖が結合し複合化・構造化されている. 近年の知見から特に創傷治癒の過程において,HAハイドロゲルが「仮の家」として, 大きな役割を担うことが明らかになってきた. 一方で生物学の発展によってHA結合タンパクの機能や役割が明らかになってきており, 医療・バイオ分野への応用が期待されている. そこで本研究では, HA結合タンパクの一つであるTSG-6に着目し, 天然のECMを模倣したハイドロゲルの開発を目的とした. 本年度は,まず微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)反応性tagを持つ機能化リンクモジュール(LinkCFQ)の発現に関して分子シャペロンとの共発現系及び菌体株の検討を行い,最大で5 mg/L cultureスケールの安定した精製系を確立した.さらに,精製タンパクのヒアルロン酸(HA)結合能を等温滴定カロリメトリー(ITC)により定量的に評価し,pH依存的なHA結合能を示すことを確認した.さらに,HAとゼラチン,LinkCFQ,MTGの混合系において,貯蔵弾性率(G’)が約200 Pa程度の脳組織等の軟部組織と同等の堅さを持つハイドロゲルの作製に成功した.実際に,ゲル上でヒト腹膜中皮細胞が接着及び増殖することを確認した.またマウス皮下へのゲル投与では,3日後にはゲルの残存は見られず,組織学的な評価によっても顕著な免疫応答性は確認されなかった.以上より本研究で開発したゲルの生分解と生体適合性が確認され,組織工学及び再生医療分野においてその応用が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,プラスミド発現系及び菌体株の検討により安定的なタンパク生産系を確立できた.また,発現したタンパクが設計通りにMTG反応性及びHA結合能の機能を有することを確認した.加えて,ECM模倣ハイドロゲルの作製にも成功し,モデル細胞により足場材料としての機能を評価できた.さらには,小型動物を用いてIn vivoでの生分解性及び生体適合性を評価し,組織工学・再生医療分野におけるさらなる応用可能性を示せたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,特にECM模倣ハイドロゲルの機能に着目した研究を進めていく.力学特性に関しては,リンクモジュールとHAの混合比,濃度を変化させることでハイドロゲルの堅さを制御する.また,リンクモジュールの持つ特異的な性質であるpH依存的なHA結合能を利用することでpH依存的な分解性を持つハイドロゲルの開発を目指す.さらに,再生医療分野で重要な機能の一つである抗炎症能に関して,特にマクロファージの分極に着目してハイドロゲルの生理活性機能制御を検討する.最後に,創傷治癒モデルにおいて本ゲルの応用可能性を示す.
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