2021 Fiscal Year Annual Research Report
ロケット燃焼器を想定した定量的レーザー計測の確立による極限環境現象の解明
Project/Area Number |
21J12839
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
樋口 靖浩 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | OH平面レーザー誘起蛍光 / ロケット燃焼 / 拡散火炎 / 定量計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ロケットエンジン内を想定した高温高圧の燃焼場に対して,火炎の断面を可視化できるOH平面レーザー誘起蛍光計測(OH-PLIF)を適用し,火炎の基礎現象を解明することが目的である.東北大学流体科学研究所のレーザー計測設備を用いて,エタノールや液体酸素を噴霧した気液混相流に対するOH-PLIFおよびその分光計測を実施した.その結果,気液混相流において鮮明な計測を阻害していたノイズは,入射レーザー由来の散乱光であることが判明し,レーザー波長から波長域が離れるほどその強度が低下する傾向を示した.よって,本研究で提案したOH(2,2)バンド蛍光計測は,信号波長がレーザー波長から60 nm程度離れているため,気液混相ロケット燃焼に適していると推測できる.次に,JAXA角田宇宙センターの高圧試験設備を用いて,圧力5.0 MPaまでの環境下におけるガス水素/酸素拡散火炎を形成し,OH(2,2)バンド蛍光のOH-PLIF計測を実施した.取得されたOH-PLIF画像では,ロケット燃焼特有の強烈な自発光によるノイズに対して,信号強度は4倍以上確保されており,鮮明な火炎構造の撮影が可能であることが示された. 東北大学流体科学研究所の高圧燃焼試験設備を用いて,最大圧力0.5 MPa,酸素富化率60%(酸素および窒素の体積比3:2)の高圧高温環境下におけるメタン/酸素/窒素予混合気の燃焼実験を実施した.この火炎に対して,本研究で新たに提案したOH(2,0)バンド励起双方向LIF計測手法を適用し,OH濃度の定量的な推定を行った.実験と数値解析によって推算されたOH濃度を比較すると,高圧条件では実験値が過小評価されていたが,大気圧では良い一致を示しており,同計測手法の一部条件下における有効性を示すことおよび課題抽出を行うことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は,①気液混相ロケット燃焼に適用可能なOH-PLIF計測を実現させるため,大気圧における基礎的な分光計測および高圧ガス燃焼におけるOH-PLIF試験を計画した.大気圧の基礎試験では,液エタノールおよび液体酸素にレーザーを照射し,分光計測を実施した.散乱光のスペクトルは入射レーザー波長にピークを持ち,比較的広い波長範囲に渡って分布していることが判明した.OH(2,2)バンド蛍光のスペクトルはレーザー波長から60 nm程度離れているため,散乱光の干渉を最小限に抑えられると考えられる.また,高圧ガス燃焼においてOH(2,2)バンド蛍光PLIF計測を適用し,同手法の課題抽出を行った.圧力5.0 MPaのPLIF画像を確認する限り,信号強度は背景ノイズの4倍程度は確保されており,鮮明な火炎断面像を取得することができた.最終的に,高圧ガス水素/液体酸素燃焼(~3.0 MPa)に対して同手法を適用し,課題抽出を行った. ②高圧高温環境下における定量可視化計測を実現させるため,既存の校正用バーナーおよびロケット燃焼条件下で作動する校正用バーナーを用いて定常火炎を形成し,本研究で提案したOH(2,0)バンド励起双方向LIF計測を実施した.実験および数値解析によって取得したOH濃度を比較した結果,大気圧では良い一致が得られたものの,高圧(~0,5 MPa)では実験によるOH濃度の推算値は過小評価されていた.その原因としてレーザーエネルギー不足等による技術的な課題があると考え,その改善を図った.また,LIFの数値解析を行うため,一部プログラムの構築を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,①高圧ガス水素/液体酸素燃焼(~7.0 MPa)において,鮮明な火炎断面像が取得可能なOH-PLIFを実現させるため,OH(2,2)バンド蛍光PLIF計測の更なるSN比の改善を目指している.具体的には,光学フィルターの性能調整等の光学測定系の見直しを予定している.当燃焼計測試験は,JAXA角田宇宙センターにおいて令和3年度に圧力3.0 MPaまで実施済みであり,計測手法の有効性も示すことができた.よって,令和4年度は同計測手法を確立し,本格的な火炎構造の撮影および基礎燃焼特性の解析が可能になると考えられる. ②レーザー分光計測および燃焼数値解析の融合によるOH濃度の定量計測を実現させるため,令和4年度は準一次元火炎を形成する校正用バーナーの動作範囲(~1.0 MPa)を拡大し,実験および数値解析の差異とその原因を考察する.また,令和3年度に高圧ガス水素/酸素燃焼(~1.0 MPa)に対してOH(2,0)バンド励起双方向LIFを適用し,乱流拡散火炎における同手法の課題抽出を行った際,火炎構造が複雑な条件下ではレーザービームのステアリング効果によって,限定的に使用できない条件があることが判明した.今後は,OH(2,0)バンド励起双方向LIFを準一次元火炎(~1.0 MPa)および乱流拡散火炎(~5.0 MPa)に対して実施し,適用可能な条件を検討する.加えて,燃焼数値解析上で実施できる数値解析LIFプログラムの構築を継続し,逆解析的に定量的なOH濃度を導く解析手法を構築する.
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Research Products
(4 results)