2021 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ支援パルスレーザー蒸着による高耐熱オールセラミックス黒色絶縁薄膜の開発
Project/Area Number |
21J12847
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山口 実奈 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 黒色絶縁体 / ナノ複合体 / 反射防止膜 / パルスレーザー蒸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
"絶縁性セラミックスと導電性セラミックスから成る黒色絶縁体をパルスレーザー蒸着(PLD)で作製する"というコンセプトを確立すべく、分相すると知られる材料系(絶縁体Ce-Zr-Oと導電体Co-O)のナノ複合体の成膜を試みた。光散乱のない緻密な薄膜が得られ、XRDとRaman分光から狙いの通り2相共存が確認されたが、SEMでは分相が観察されず、SEM分解能以下のナノスケールの複合体と示唆された。しかし、可視光全域での吸収係数が小さく、これはCoOxの吸収係数が小さいことに由来すると考えた。 複合化した際に可視光での強い吸収を得るためには、光吸収を担う導電体が大きな吸収係数を持つことを重要と考え、強く平坦な可視光吸収を有するセラミックス材料の探索に取り組んだ。粉末形状で黒色を示すセラミックスの薄膜をPLDで作製し、 吸収係数の評価を行った。 30μm^-1以上の大きな可視光吸収係数と小さな吸収係数波長依存性を有するW-Ti-O-Nを導電体として選択し、絶縁相Al2O3との複合化を試みた。窒素プラズマ支援PLDでAl2O3-TiO2複合体ターゲットを用いて成膜した試料は、組成に依らずAs-depo状態で分相しておらず固溶体と示唆された。Alの増大に伴い、可視光域の吸収係数は減少し、電気抵抗が増大した。いずれの組成でも目標の吸収強度と電気抵抗は両立しなかった。後熱処理による微細組織の制御や、それに伴う光学特性・電気特性の変化が期待される。 また、既報の金属-絶縁体からなる黒色絶縁体を用いて、高屈折率TiO2と低屈折率SiOxNyとの積層化による黒色絶縁体を積層膜に取り組むことによる透過率と反射率の制御が可能か調査した。膜厚と積層順序の最適化により、低反射率かつ任意の透過率がシミュレーションで得られ、それに基づく試料作製も行い、黒色絶縁体を取り込んだ反射防止黒色絶縁体が作製可能と示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PLDによりセラミックスナノ複合体を作製できた点、および、高い光吸収係数を有する導電性セラミックスを探索できた点においては順調であった。高・低屈折率層と黒色絶縁層の積層により低い反射率と任意の透過率を得る、積層設計や積層試料作製の事前準備も行えた。しかし、本年度の最たる目標であった、可視光全域の強い光吸収と高い電気絶縁性を有するセラミックスナノ複合体の作製には至っておらず、計画よりもやや遅れていると言わざるとを得ない。熱力学的検討から相分離すると考えられる材料系を選択したが、予想と反して固溶体が得られた。温度やイオンビームの電流・電圧など多数の成膜パラメータの最適化を試みたが、複合体は作製されておらず、これは本成膜方法の非平衡性に由来すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで固溶体が得られたWi-Ti-O-NとAl2O3の系については、後熱処理による分相を試みる。熱処理雰囲気・温度により出現相・組織が変化すると考えている。Raman測定、XRD測定およびSEM観察により、熱処理前後の出現相・組織を調査する。また、他の材料系での黒色絶縁体の開発も検討する。本年調査した粉体で黒色を示す導電性セラミックスのうち、強い可視光吸収を有したW-Ti-O-N以外の材料を光吸収導電相として採用し、ナノ複合体の作製を試みる。この際、窒素プラズマを用いずに高温成膜を行うことで、熱力学的平衡相が得やすいと考えている。試料の光学特性・電気特性および耐熱性評価を行い、黒色絶縁のオールセラミックスナノ複合体が得られたら、黒色絶縁層と高・低屈折率層の積層により反射防止黒色絶縁体を作製し、その光熱変換効率を測定したいと考えている。
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