2021 Fiscal Year Annual Research Report
Generation and application of hPSC-derived bone organoids based on the human skeletal development
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21J12970
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷 彰一郎 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ヒト多能性幹細胞 / 内軟骨性骨化 / 1細胞解析 / 遺伝子発現制御機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの骨系統疾患の病態を解明し、新規治療法を開発するためには、ヒトの骨格形成過程を詳細に理解することが不可欠である。一方で、ヒト由来の検体を研究に利用するには、倫理的な面から制限がある。本研究では、あらゆる細胞に分化可能な多能性幹細胞を用いて、ヒトの骨形成過程や骨組織そのものを再現し、その背景にある分子機序を解明することを目指している。また、すでに今までの研究成果において、ヒト多能性幹細胞から骨格前駆細胞を誘導し、マウス体内へ移植することでヒトの骨組織を作製する方法を確立済みである。そこで、得られたヒト骨組織を1細胞解析を用いて詳細に解析し、ヒトの骨形成に関与する遺伝子制御ネットワークやその構成因子の解明や探索を試みた。当該年度において、以下の成果が得られた。 (1)ヒト多能性幹細胞由来の骨組織の時系列データ(7週、19週)から経時的なヒト骨格細胞の分化系譜を検証した。また、公共データベースからヒト胎児長管骨のデータセットを取得し、統合解析を行うことで骨格細胞の分化系譜における共通点や相違点について検証した。結果として、ヒト多能性幹細胞由来骨組織がヒト胎児期の軟骨内骨化を模倣していることが示された。 (2)遺伝子発現を直接的に制御することが知られるクロマチンアクセシビリティも加えた1細胞多層解析を行い、骨格細胞の分化系譜における遺伝子発現制御機構の動態について検証を試みた。分化系譜に応じたクロマチンアクセシビリティと遺伝子発現が細胞種毎に変化することが示された。そこで他の遺伝子発現を制御する転写因子に着目し、遺伝子発現と転写因子モチーフ活性をもとに機能的な転写因子群の同定を試みた。結果として、骨における新規転写因子を同定した。さらに、新規転写因子の機能解析を行い、骨芽細胞において重要な機能が知られる複数の転写因子を制御することで骨芽細胞分化に寄与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況として、下記2点が主要な内容と考えられる。 (1)1細胞解析、特に1細胞多層解析において大きく進展が得られ、当初目標としていた遺伝子発現制御機構の検証に加えて、新規転写因子候補を同定するに至った。また、同定した因子について機能解析を行い、骨組織内での発現分布や機能喪失系実験における主要な骨芽細胞関連因子との相関関係を確認することができた。これによって、従来知られていなかった新たな骨分化制御機序が明らかになる可能性があり、これは当初の想定以上の進捗であると考えている。 (2)骨オルガノイド作製に関しては、Organ-on-a-chipシステムの実装に時間を要した関係で、次年度よりこの実証を行う予定である。すでに、実験を開始する準備は済んでいるものの、この点は当初の想定よりも進捗が若干だけ遅れている部分と考えている。 上記を踏まえると、当初想定した工程を着実に達成しており、現時点で十分な進捗が得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、骨オルガノイド作製を目標にOrgan-on-a-chipシステムを用いた培養系の確立を進める予定である。ただし、想定以上に骨形成や血管新生が困難である場合は、系の最適化も含めて時間を要する可能性がある。その場合は、特に骨オルガノイドへの血管新生の達成が重要な課題であることを念頭に、血管誘導因子の強制発現を導入するなどの対策は考慮している。 一方で、新たに同定した骨分化関連転写因子の機能解析を引き続き推進する予定である。これによって、未知の骨形成機序や病態機序、治療標的の発見などが期待される。すでにいくつかの機能解析において十分な結果が得られており、さらに詳細な機能を明らかにするため、ノックアウトマウスを用いた表現型の検証に加えて、ChIP-seq等のエピゲノム解析によって他の転写因子との関係性や相互作用も含めて追加で検証を行う予定である。
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Research Products
(10 results)