2021 Fiscal Year Annual Research Report
行列模型から探るホログラフィー原理と非閉じ込め相転移
Project/Area Number |
21J13014
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡辺 展正 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | 超弦理論 / 場の量子論 / 行列模型 / 非閉じ込め相転移 / ホログラフィー / モンテカルロシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はいくつかの行列模型の非閉じ込め相転移を調べ、相転移の過程で出現する可能性のある中間相に注目した研究を進めた。 BFSS行列模型やBMN行列模型は、超弦理論の有効理論としての側面を持つ低次元の場の量子論でああり、ホログラフィーを通じて重力理論との双対関係が予想されている。本研究ではこれらの模型の有限温度系を格子モンテカルロ計算にて解析し、これまで数値的に確認されなかった閉じ込め相が出現することを発見した。この閉じ込め相の存在は、超弦理論の背後に存在する非摂動的定式化として予言されているM理論と行列模型との間の関係性(BFSS予想)に基づく考察と無矛盾であり、中間相の存在及び行列模型がM理論を記述するパラメータ領域に到達した可能性を示唆している。今後さらに行列サイズを上げた数値解析を実施して閉じ込め相の性質を調べた際に、M理論の物理現象を真に捉えているかを判定する方向性についても議論した。 また、有限温度ラージNゲージ理論での非閉じ込め相転移の過程にて、閉じ込め領域と非閉じ込め領域が共存する二相共存現象として「部分閉じ込め」という現象が近年議論されている。この現象はホログラフィーを通じて重力理論におけるブラックホールの生成/蒸発現象と双対だと予想されるため、ホログラフィーの性質にさらに迫れる可能性を秘めている。本研究では、これまで部分閉じ込めが起こる簡単な系として解析されてきたガウス型行列模型に基本スカラー場を導入して拡張した模型を解析的・数値的に調べた。そして、熱力学的に安定な相として部分閉じ込めが実現する系であることを示し、その性質を調査した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BFSS行列模型の数値計算の結果により、予想していなかった新しいアイデアが得られた点で大きな進展があった。ガウス型行列模型の解析での計算コードの準備も含めて予定よりも少し遅れているが、着実に進展をみせている。
|
Strategy for Future Research Activity |
継続してBFSS行列模型の解析に取り組むが、重力理論側からの理論的な予測にも着目しながら議論を進める予定である。 基本スカラー場を含むガウス型行列模型の研究では、相互作用項を加えた非自明な設定に格上げした上で、模型の相構造を解明し相互作用の存在に寄らずに部分閉じ込めが中間相で発生するかを検証する予定である。 またラージNゲージ理論の部分閉じ込めを、より現実的な状況設定下や量子情報や他の物性系で考察される観点から再考してみたい。
|
Research Products
(7 results)