2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the pathogenic mechanism and establishment of preventive measures of vascular abnormal contraction using mulberry-derived components
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21J13092
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
鶴留 奈津子 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | スフィンゴシルホスホリルコリン / Fisetin / 血管平滑筋細胞 / マイクロドメイン / カベオラ / ラフト / 食品成分 / 桑葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋梗塞や脳梗塞の原因となる血管異常収縮は、老若男女問わず誰もが発症するリスクを抱えているが、治療法も予防法もなく世界の死因の多くを占めている。その原因分子としてスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)が同定されているものの、SPCによる異常収縮の病態形成メカニズムは未解明である。これまでの研究で、樹齢20年以上の桑葉に含まれるFisetinが血管異常収縮を予防可能であることを世界で初めて発見した。そのためFisetinによる予防法確立が期待されるが、SPCによる異常収縮発症機序が未解明なため難しくしている。そこで本研究では、SPCによる血管平滑筋異常収縮の病態形成メカニズムや予防成分Fisetinによる作用機序を明らかにするため、細胞膜上マイクロドメインに焦点を当てSPCとFisetinの作用機構の解明に取り組んだ。 細胞膜上マイクロドメインは、スフィンゴ脂質やコレステロール、タンパク質より構成されている細胞膜上の局所部位である。そのため血管平滑筋細胞膜よりマイクロドメインを分取する手法の確立を行い、構成脂質の組成解析や、マーカータンパク質であるCaveolin1やFlotillin1の発現の解析を行い、SPC刺激に伴うマイクロドメイン上の脂質やタンパク質への影響を評価した。またコレステロールを除去したマイクロドメイン破壊細胞を作製し、SPC による異常収縮の発生を確認することで、異常収縮の病態形成とマイクロドメインとの関係性を明らかにした。さらに血管平滑筋細胞に作用したSPCの局在解析を蛍光イメージングにて行い、エンドサイトーシスの関与を明らかにし、異常収縮誘発後のSPCの動態解析に成功した。 さらに、令和4年度に実施予定であるSPCの作用点解明のため、令和3年度に前倒ししてRNA-seq解析を行いSPC刺激に伴うRNA発現量の変化から関連シグナル伝達の検討をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、Fisetinによる血管異常収縮の予防法を確立するため、原因分子SPCによる病態形成メカニズムやFisetinの作用機序解明に取り組んできた。研究代表者は、実施計画に基づき研究を遂行し、細胞膜上マイクロドメインの関与やSPCの細胞内移行について明らかにすることができた。 令和3年度は、SPCによる血管異常収縮に関与しているとされてきた細胞膜上マイクロドメインと平滑筋細胞における病態形成メカニズムの関係性を明らかにし、原因分子SPCの動態解析に成功した。そのため令和4年度の予定を繰り上げ、細胞膜上でのSPCの作用部位を特定するためRNA-seq解析を行い、SPC刺激に伴うシグナル伝達について検討することができた。またSPCの類似構造化合物を用いた実験により、細胞膜上の作用部位を絞り込むことができた。以上より、本研究は当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seq解析により見出した新たなシグナル伝達経路やSPCの類似構造化合物を用いた実験から積み上げた根拠をもとに独自の仮説として作用点を類推している。そのため、仮説作用点がSPCによる異常収縮の病態形成に関与することを、細胞形態観察や細胞内Ca2+を測定することで明らかにしていく。
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