2021 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外膜小胞への新奇タンパク質輸送機構の解明と応用
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21J13113
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
釜阪 紘平 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞外膜小胞 / タンパク質輸送 / タンパク質分泌装置 / 莢膜多糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
Shewanella vesiculosa HM13は約 49 kDa のタンパク質 P49 を主要な積荷とする細胞外膜小胞 (EMV) を生産する。本菌を利用した EMV を介した異種タンパク質生産や機能性ナノ粒子の開発に貢献するため、P49 の EMV への積荷輸送の解明に取り組んだ。P49 遺伝子の近傍域には、Wzx のホモログ遺伝子などの多糖合成遺伝子群や II 型分泌装置 (T2SS) のサブユニットホモログをコードする遺伝子群が存在していた。以前の研究により、P49 は T2SS 様分泌装置の働きによって細胞内から汲み出され、その後 Wzx 依存的に合成される表層多糖成分と相互作用することで EMV へと輸送されることが示唆されていた。本年度はこの P49 輸送に関与する多糖についてより詳細な解析を行った。さらに、未知であった P49 の機能に関しても新知見を得た。 EMV の表層多糖を解析したところ、Wzx 依存的に合成される新奇多糖構造が検出された。この構造は共同研究者による質量分析および NMR を用いた解析により解かれ、新奇のアミノ糖を含む莢膜多糖 (CPS) 構造であることが明らかとなった。さらに、P49 遺伝子周辺存在する多糖合成関連遺伝子群がこの CPS 合成に関与していることが判明した。また、P49 の二次構造を解析したところ、 P49による CPS の分子認識には、P49 自身の構造変化が関与していることも示唆された。さらに、EMV をナノ粒子トラッキング解析に供したところ、P49 は EMV と結合することで EMV の自己会合を抑制することが分かった。これは EMV の粒子分散性と表面積を増加させることに寄与する新奇の機能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EMV による積荷輸送において、これまでは T2SS 様分泌装置によって分泌された積荷タンパク質 P49 が EMV に移行する機構が不明であった。P49 と相互作用する EMV 表層 CPS の存在および構造が明らかとなったことは EMV への積荷輸送の解明において大きな進展であったと言える。また、機能未知であった P49 に関しても、EMV の分散を促進する機能が新たに発見されるなど、進展があった。一方で、P49 の構造解析、T2SS 様分泌装置による分泌に関わるモチーフおよび CPS 認識に関与するモチーフの同定などは未完了である。また、P49 をキャリアとする融合タンパク質の高純度生産など、本菌の特性の積極的な応用も未完了であることから、「おおむね順調である」と評価することが妥当であると考えられる。(358文字)
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Strategy for Future Research Activity |
P49 の構造解析を進める。CPS 合成能を喪失した株において、P49 は EMV へ輸送されることなく培養上清中へ分泌されることが分かっている。この変異株を用いて培養液中から精製した P49 を用いて、X 線結晶構造解析による構造決定を目指す。一方、P49 と相互作用しない変異型の CPS を合成する変異株が得られており、この変異株の CPS 構造を解析することで相互作用に関与する CPS 構造を明らかにする。さらに、P49 と CPS の分子間相互作用を等温滴定型熱量計用いて解析する他、人工のリポソーム上に提示した CPS に対しての P49 結合能を調べる。 また、本菌の EMV への外来タンパク質の導入に関して新たな方法を試みる。これまで、P49 の C 末に融合タンパク質を発現させることを試みたが、発現量が P49 と比較して著しく低下していた。そこで、P49 に低分子量のペプチドタグである SpyTag の導入を試みる。SpyTag は 12 kDa 程度の SpyCatcher タンパク質と共有結合を形成するタグであり、SpyChatcher 融合タンパク質を外部添加することで SpyTag を導入したタンパク質に結合させること出来る。これまでの研究により、P49 は CPS に結合して EMV 表層に存在していることが示されており、P49 に SpyTag を導入したものを足場とすることで、外来タンパク質を EMV 表層に提示可能であると考えられる。これによって融合発現による発現量の低下を回避しつつ外来タンパク質を EMV へ積み込むことが可能であると考える。
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Research Products
(3 results)