2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J13130
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷田 恵太 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ粒子点眼薬 / ドラッグデリバリーシステム / 緑内障 |
Outline of Annual Research Achievements |
失明原因第一位の緑内障は、眼内を満たす房水の出口が狭窄し眼圧が上昇する眼疾患であり、房水を眼外へと導く濾過手術が最終的に行われる。しかしながら問題点として、形成した濾過胞の瘢痕化に伴い新しい房水の流出路が塞がり、徐々に眼圧が再上昇する点が挙げられていた。対策として、マイトマイシンCを代謝拮抗薬として術中塗布しているが、術後の良好な薬剤は見出されていない。本研究では、緑内障術後の瘢痕化を抑制するナノ粒子点眼薬の開発を目指し、候補化合物のみで構成されるナノ粒子の作製とその眼内動態を明らかにすることを目的とした。ナノ粒子は、微小なサイズと疎水性表面を併せ持つため、眼内への透過性が高いことが明らかになっており、術後も継続的に創部の瘢痕化を抑制し、眼圧下降効果を維持することが期待される。 本年度は、瘢痕化抑制効果が期待される水溶性薬物コルヒチンから構成されるナノ粒子の作製とその薬効評価を実施した。ナノ粒子化手法の一つである再沈法は、水との溶解度差によりナノ粒子を作製するため、コルヒチンに対して疎水性置換基を導入した誘導体を合成し、ナノ粒子作製を試みた。置換基検討の結果、加水分解酵素が豊富ではない眼内環境では、誘導体からの活性本体の放出が大きく抑制されることが明らかとなり、最終的に、迅速な環化反応による分子放出機構を備えたトリメチルロック(TML)基を導入した誘導体(TML-コルヒチン)を合成し、最適な分子設計とした。再沈法に供することで、誘導体のみで構成されるナノ粒子が得られ、生理食塩水中で一週間以上安定に分散することが明らかになった。さらに、ヒト線維芽細胞を用いたin vitro試験の結果より、ナノ粒子は活性本体であるコルヒチンと同程度の増殖抑制活性を示した。以上の結果は、TML-コルヒチンからコルヒチンが迅速に放出され、薬理活性を発揮したことを意味している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの成果として、スクリーニングで選抜した水溶性薬物コルヒチンの疎水性誘導体の合成およびナノ粒子化を達成していたが、加水分解酵素が豊富ではない眼内環境における薬物放出の抑制が懸念されていた。そこで迅速な加水分解が可能な分子設計での新たなナノ粒子の作製を現在まで、実施してきた。さらに、結膜組織透過性評価に用いる蛍光ナノ粒子の作製も達成しており、実際に投与に用いる生理食塩水中で一週間以上安定に分散することを確認済みである。設定したマイルストーンに関して、概ね達成(70%)している。
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Strategy for Future Research Activity |
高眼圧ラットモデルのプロトコルが確立され次第、有力な置換基候補群の投与と瘢痕化抑制評価を順次開始していく。高眼圧ラットモデルを用いた動物実験の結果、良好な薬理活性が確認されなかった場合は、創部での選択的な薬物放出が進行していないことが予想される。その場合は、置換基とコルヒチンの結合様式など細部の分子設計を調整することで、目的の瘢痕化抑制作用を有するナノ粒子点眼薬の開発を達成する。
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