2021 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合ネットワークに着目した青色光受容タンパク質ファミリーの機能制御機構の解明
Project/Area Number |
21J13329
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細川 雄平 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 光受容 / タンパク質内電子移動 / 電荷分離 / 構造機能相関 / 分子進化 / 光回復酵素 / クリプトクロム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゲノム恒常性や概日リズム形成に関与する青色光受容タンパク質ファミリーである光回復酵素・クリプトクロムスーパーファミリー(PCSf)の機能制御機構に着目した。令和3年度ではPCSfタンパク内で光依存的に生成する電荷分離状態の安定化に関する研究を展開した。中でもシロイヌナズナ由来の(6-4)光回復酵素において補因子であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)とトリプトファン残基との間で光依存的に形成される電荷分離状態の安定化機構を、ナノ秒オーダーの時間分解測定を含む分光学的測定と分子動力学計算を組み合わせることで新規に解明した。これによりC末端領域がつくる制限された水和環境が電荷分離状態の安定化に重要であるという知見が得られた。C末端領域はFADの結合部位に比べてPCSfタンパク内で配列が多様化していることを合わせて考慮すると、各PCSfタンパクが電荷分離状態を安定化し機能発現を制御する上で、C末端領域を進化させている可能性が考えられる。さらにシロイヌナズナ由来の(6-4)光回復酵素において、光依存的なFADの還元状態の変化に伴ってC末端領域のアミノ酸の配向が変化することも見出している。このアミノ酸はクリプトクロムにおいても保存されていることから、光回復酵素で得られた結果に基づいて、研究が盛んであるクリプトクロムの光依存的な構造変化機構に関して新たなモデルを推定できる可能性がある。今後、これらの知見がPCSf内での機能制御機構を解明する上で重要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナ由来の(6-4)光回復酵素においてC末端領域が電荷分離状態の安定化に寄与することを明らかにした。一方でその安定化機構は当初の想定とは異なる予想外の機構であり、これを論文報告した。クリプトクロムに関する研究を展開する上で、令和3年度ではまずタンパク質の精製を試みた。野生型の精製には成功した一方で、変異体の安定性が低いことがわかった。今後、精製プロトコルの最適化もしくは他の変異体の検討を行う必要があるという状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
クリプトクロムを用いた研究を展開するにあたり、精製に使用している緩衝液に変更を加える必要があることが示唆されたので、これを検討する。またクリプトクロムを加熱すると、分解する可能性が示唆された。これを受けて、クリプトクロムの光依存的な構造変化を検出するにあたり、当初のトリプシン処理とSDS-PAGEを組み合わせた手法ではなく、トリプシン処理と非変性PAGEを組み合わせた手法を用いることを検討する。
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Research Products
(3 results)