2021 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病におけるミクログリア活性化メカニズムの解明
Project/Area Number |
21J13397
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井口 明優 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | アルツハイマー病 / マイクログリア / TREM2 / INPP5D |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病では脳内にAβ斑と呼ばれる神経毒性を有する構造が形成されるが、脳内の免疫細胞であるマイクログリアはその周囲に集簇することで、神経保護的に働くことが知られており、TREM2シグナルがこの機能に必須であることがこれまでに明らかになっている。本研究の目的はTREM2活性制御候補因子の同定とマイクログリア機能に与える影響の解析である。 遺伝学的に介入したアルツハイマー病モデルマウスを用いた解析から、これまでにINPP5Dがミクログリアの集簇に関与することは示唆していたが、マウス脳切片を用いた解析から、神経保護機能に関してもINPP5Dが寄与する可能性が示唆された。そのためINPP5DをTREM2下流で機能を制御する候補因子として、2022年度にはより詳細にTREM2経路の制御に関わるかについて検討を行う。 また、これまでにTREM2活性評価系として、TREM2の下流で働くことが知られている転写因子であるNFATの核内移行に反応する細胞として、5xNFATレポーターミクログリア細胞株の作出を行った。また、この細胞に対し、TREM2機能と関連のあるリガンドであるリポポリサッカライドや凝集Amyloid βタンパク質を添加することで、応答することを確認した。2022年度はこの細胞を用いて既知のミクログリアに高発現するADリスク遺伝子に対して介入を行うことで、これら遺伝子のTREM2シグナルへの寄与を解析することが出来ると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下流分子としてINPP5Dを見出し、ミクログリアの集簇への影響を解析したもので、現在revision中であり、TREM2下流分子レポーター系に関しても、やや感度が想定よりも低かったものの、解析できる条件を確立し、以降解析を実施できる状態にあるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
アルツハイマー病の遺伝学的リスク因子であるINPP5DとTREM2/TYROBPとの関連について引き続き解析を進める。INPP5DはセカンドメッセンジャーPI(3,4,5)P3を特異的に代謝する脱リン酸化酵素であり、前年度までにアルツハイマー病モデルマウスにおいてアミロイド斑周囲に集簇したマイクログリアに特異的に高発現していることを見出している。また、マイクログリアの集簇異常を示すTREM2機能低下マウスにおいてInpp5dを欠損した場合に、マイクログリアの集簇が改善することを見出している。マイクログリアの集簇には神経保護的な役割が想定されているため、今後は、集簇回復したアミロイド斑周囲における神経細胞への影響について解析を行う。具体的には、神経障害に関連したマーカー分子の免疫組織化学的解析や脳脊髄液中バイオマーカー発現量の解析を行い、マイクログリア集簇回復と神経障害の関連について明らかにする。 また、INPP5DによるTREM2/TYROBP機能制御の分子機序を明らかにするため、初代培養マイクログリアやミクログリア培養細胞株に対してこれら因子を発現抑制した際の生存性や遊走性、形態などに対する影響について解析を行う。さらに、前年度に作出したTREM2活性レポーター細胞を活用して、INPP5Dやそれ以外にもこれまでに同定した候補因子についてTREM2下流シグナルに対する影響を詳しく解析する。具体的には、これら因子をノックダウン、またはノックアウトしたマイクログリア培養細胞株におけるレポーター活性への影響を解析する。またTREM2のリガンド分子による刺激を行った際のレポーター活性への影響についても解析を行う。これらを通じて、TREM2/TYROBP活性の制御機構について新たな知見を得る。
|
Research Products
(1 results)