2021 Fiscal Year Annual Research Report
日本語母語話者による英語黙読時における心内辞書への母語の音韻的干渉の解明
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21J13422
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 理佐 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 心理言語学 / メンタルレキシコン / 第二言語習得 / 音声学 / 音韻論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、文字処理におけるメンタルレキシコンのメカニズムを検証する実験を2つ行った。以下にその詳細を示す。 1. 日本語で文を読んで処理するときに、漢字表記された同音異義語(例:「回想と海藻(音読み語)」,「糊と海苔(訓読み語)」)が与える影響について検証した。その結果、「回想」という語を極めて短時間(120ms)提示されたあとに「海藻」という語が文の中に登場した場合に読む速度が早くなるというように、音読み語の方が同音異義語による影響を受けやすいということがわかった。これにより、人間に備わっていると考えられる文字情報を音の情報に変換して処理するシステムが、母語か第二言語か、アルファベットのような表音文字を使うか漢字のような表語文字を使うか、といった言語の違いによらず普遍的に存在していること、また単語の処理のみならず文の処理でもこのシステムが機能することが示唆された。加えて、文字情報を音の情報に変換する処理の機能しやすさは、語彙の種類によって異なりうることを示した。 2. 日本語を母語とする英語学習者が第二言語としての英語の単語を文字で見て、その単語が実在するか判断するときでも、LとRのような日本語の音で区別がない音を含む単語(例:lockとrock…どちらも「ロック」)を混同してしまうのかを調査した。また、文字処理での混同しやすさとL,Rを含む単語の発音の正確さとの関連性についても分析した。具体的には、先述の実験と同様極めて短時間(120ms)lockという語を提示したあとにrockという語を見せると、同じ単語を2度見たかのように認識・反応するかということである。この実験についてははっきりとした結果は出ず、実験手法やアイテムが改良されて2022年度の実験の土台となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの流行により、実験計画の遂行に遅れが発生してしまった。10月の後半にリモートでの実験を実施することができたものの、その実験デザインに欠陥があったことにより実験を作り直した上で、次年度である2022年度に再実験する必要が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、博士論文の完成に向けて複数の実験を実施する。実験の内訳は、第二言語としての英語の視覚的処理のメカニズムを1. 単語単位で観察するものと(以下実験1)、2. 文単位で観察するもの(以下実験2)である。 4月から5月には実験1の実験案を完成させ、パイロット実験を行う。必要があればパイロット実験の結果をもとに実験計画の修正を行い、6月から本実験の実施に移れるようにする。6月から9月にかけて実験1のデータを集め、結果をまとめてKJEE (Komaba Journal of English Education)に投稿する。 10月から12月で、実験2のパイロット実験とデータ収集を行い、実験1のデータとともに博士論文の一部とする。1月から3月で、必要があれば追加実験を行い、他の研究者からのフィードバックを反映させつつ博士論文の執筆を進める。
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Research Products
(1 results)