2021 Fiscal Year Annual Research Report
高密度環境プラズマが拓く二次元ヘテロ構造材料の新展開
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21J13463
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 健一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 液中プラズマプロセス / 六方晶窒化ホウ素 / 有機/無機複合材料 / 表面改質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では有機/無機複合材料で用いられる機能性フィラーについて、その表面に異種層を形成することで優れた分散性と新たな機能性を発現させるハイブリッドナノフィラーを着想し、液中プラズマプロセスを用いたその合成・実現を目的としている。2021年度は熱伝導性フィラーとして用いられる二次元層状物質である六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を対象に、ヒドロキノン溶液中プラズマ処理による粒子表面でのカーボン層形成を実施した。作製された液中プラズマ処理hBNは高いゼータ電位と優れた分散性を発揮し、それらを充填させた複合エラストマーではhBN由来の熱伝導性や電気絶縁性といった機能性を保持しながらフィラー分散性が改善し、引張強度や伸び率の向上などの機械特性の向上が確認された。これらの成果について、国際学会と論文誌にて発表を行っている。またこの液中プラズマ処理hBNはラマン分光や電子スピン共鳴を用いた分析からダングリングボンドに富んだカーボン層が形成されていることが示され、さらにこのカーボン層を介してイソシアネート基等の官能基の修飾が可能なことも確かめられた。これらの成果についても国際学会にて発表を行いShort Presentation Awardを受賞している。またこれらの結果からヒドロキノン液中プラズマを用いて作製したカーボン積層hBN粒子は、カーボン層を介して官能基を修飾することでポリマーとの結合を形成できることを示しており、有機/無機複合材料において強固なポリマー/フィラー界面相互作用を設計できることを意味する。本研究を通じて、hBN上でのカーボン層形成が有機/無機複合材料における分散性の改善だけでなく、ポリマー/フィラー界面相互作用の設計という新たな機能を付与できることを示し、ハイブリッドナノフィラーの実現に向けて一歩前進することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では有機/無機複合材料で用いられる機能性フィラーについて、その表面に異種層を形成することで優れた分散性と新たな機能性を発現させるハイブリッドナノフィラーを着想し、液中プラズマプロセスを用いたその合成・実現を目的としている。2021年度は二次元層状物質である六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を対象に、液中プラズマによる粒子表面でのカーボン層形成に取り組み、実際にヒドロキノン溶液中プラズマ処理によってカーボン層を有するhBN粒子を合成した。さらにこれらの合成プロセスについて約2 g/hのスケールアップまで成功したことで、カーボン積層hBN粒子をハイブリッドナノフィラーとして用いた複合材料作製まで実現した。これらの実験からカーボン積層hBN粒子は熱伝導性・電気絶縁性といった機能性を損なうことなく、ポリマー中での分散性を大幅に向上させ、それによって複合材料の機械特性の改善も確かめられた。 hBN上に形成したカーボン層はラマン分光からアモルファスカーボンと同定され、これはグラフェン等の二次元物質とは異なるものの、目的の1つである分散効果は予定通り得られている。また今回得られたカーボン積層hBNはダングリングボンド形成を介した接合が電子スピン共鳴から示唆され、二次元物質が積層したファンデルワールス・ヘテロ構造とは異なる結合状態を有しており、こちらでは強固な結合に基づくポリマー/フィラー界面相互作用の設計という新たな機能性が期待できる。その第一歩としてカーボン層を介したhBN粒子への官能基修飾にも取り組み、実際にイソシアネート基の修飾が可能と確かめられている。イソシアネート基は一部のポリマーとウレタン結合を形成することから、これらのカーボン積層hBNではポリマーとの強固な相互作用が期待でき、それを活用した強靭かつ高機能な複合材料の実現が次年度の目標となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では熱伝導性フィラーとして用いられる二次元層状材料である六方晶窒化ホウ素(hBN)を対象にヒドロキノン溶液中プラズマを用いた表面カーボン層形成によるハイブリッドナノフィラー開発に取り組み、昨年度までの研究では、これらの液中プラズマ処理hBNでのアモルファスカーボンの形成がラマン分光等から確かめられている。本年度はこれらの結果を基に、カーボン積層hBNをハイブリッドナノフィラーとして用いた有機/無機複合材料開発を推進し、異種層形成によって得られる新機能を検証する。これらのhBN粒子はカーボン層を介してイソシアネート基等の官能基修飾が可能であり、有機/無機複合材料においてはポリマーと共有結合を形成することで強固なポリマー/フィラー間相互作用を設計できる。それによってカーボン積層hBNを用いた複合材料では、hBN粒子の充填による熱伝導性・電気絶縁性といった機能性のみならず、強靭化といった機械特性の改善も期待できる。熱伝導複合材料の開発において、これまで熱伝導性フィラーの充填率を高めると材料の脆化を招くことが課題とされてきたが、これらのハイブリッドナノフィラーを用いてポリマー/フィラー間相互作用を設計した複合材料では高充填率における高熱伝導度と強靭な機械特性の両立が見込まれる。実験ではイソシアネート基を修飾したカーボン積層hBNをスライドリングポリマーと呼ばれる可動な架橋構造をもつポリロタキサンと複合化することで、フレキシブルデバイス等で使用可能な柔軟かつ高強度な放熱シートの開発を目指す。ハイブリッドナノフィラーによる有機/無機ナノ界面の設計と、電界等を用いたフィラー配向による組織制御を組み合わせることで、高靭性(>1 kJ/m2)と高熱伝導度(5~10 W/mK)を両立したフレキシブル放熱シート開発が目標となる。
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Research Products
(3 results)