2021 Fiscal Year Annual Research Report
High Efficient Operation Method of Wirelessly Powered High-Precision Stage for Next-Generation Lithography Systems
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21J13598
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 拓巳 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 無線電力伝送 / 精密ステージ / パワーエレクトロニクス / 制御工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶パネルや半導体の製造に用いられる精密ステージは,製品の高性能化と低価格化を達成するために,高速高精度な駆動が要求される。精密ステージの位置決め精度を低下させる要因は複数考えられ,これまでに機構面・制御面の両面から解決が図られてきた。本研究グループでは最後に残された要因であるケーブル張力による外乱に着目し,それを解決すべく電力ケーブルの代わりに無線電力伝送で駆動する精密ステージ(Wireless High-Precision Stage; WHPS)を試作した。本研究ではWHPSの電力制御や位置決め制御,機構面の改善に取り組む。 2021年度は電力制御と位置決め制御に取り組んだ。WHPSでは無線電力伝送回路に接続されている負荷のモータの消費電力が時々刻々と変わり,ステージの動作軌道,特に減速時によっては回生が起きることが考えられる。そのようなときに負荷の直流電圧が不安定化することに着目し,力行と回生で受電側の整流回路のスイッチング動作を切り替えることで電圧を安定化させる制御を提案した。また,WHPSの駆動効率の向上を目的とし,送電側電圧を制御することで無線電力伝送の効率と受電側の整流効率の向上させる手法を提案した。両手法ともに,WHPSの動作軌道や駆動条件から計算される消費電力軌道に基づいた手法であり,WHPS特有の手法である。また,両手法はWHPSのモデルを利用した数値シミュレーションで検証した。 また,位置決め制御においては,精密ステージで近年盛んに研究されているフィードバック制御器の状態変数のリセットを利用した制御に着目し,位置決めのオーバーシュートを低減する制御を提案した。より効果が大きかったボールねじ駆動ステージで検証したが,提案手法の理論自体は一般的であり,WHPSの位置決め制御にも適用可能だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度においては,指導教員や共同研究企業との打ち合わせを通じて研究を進め,無線電力伝送で駆動する精密ステージ(Wireless High-Precision Stage; WHPS)の動作軌道から計算される消費電力軌道に基づいた電力制御手法を提案し,数値シミュレーションにて検証した。精密ステージの動作が非常に精密に制御されているが故に可能な手法で,WHPSの特性を活かした電力制御手法と言える。このような電力制御の研究は当初の研究計画に含まれており,順調に研究が進展していると言える。WHPSに提案手法を実装するためにはField-Programmable Gate Array(FPGA)の利用が必須となっているが,現在はそのコード実装と一部の検証は完了している。今後は提案手法のFPGAへの実装を終わらせ,実験機を少し改良した後に実験で検証する予定である。 また,2021年度はもともと研究計画にはなかったステージの位置制御にも取り組み,フィードバック制御器の状態変数のリセットを利用したオーバーシュート低減手法を提案した。これは,露光装置用精密ステージの制御手法の論文調査を発端としている。精密ステージの位置制御においては定常誤差を抑圧するためにフィードバック制御器として積分器がよく用いられるが,この積分器がオーバーシュートの原因にもなる。提案手法ではフィードバック制御器の状態変数を途中でリセットすることでオーバーシュートを低減するが,リセットするタイミングと値について数値シミュレーションと実験で検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は無線電力伝送で駆動する精密ステージ(Wireless High-Precision Stage; WHPS)の安定・高効率駆動のための電力制御を実験にて検証する。2021年度に提案し,数値シミュレーションを行っていた送電側・受電側の電圧制御をWHPSに実装する予定である。実装に不可欠なField-Programmable Gate Array(FPGA)の実装を完了させ,実験機を改良した後に実験を行い,論文発表を行う。2022年度も引き続き指導教員や共同研究企業との議論を行いながら研究を進めていく。 また,当初の研究計画通り,WHPSの駆動の高効率化のための送電コイルの設計手法・利用方法を提案・検証する。WHPSの動作範囲を1つの大きな送電コイルで対応すると,送電側と受電側の結合係数の低下や送電コイルの抵抗の増加につながり,効率の低下を招く。そこで,送電コイルを小さな複数のコイルに分割し,切り替えながら利用することを提案する。所望の送電電力・効率を達成できる送電コイルの設計手法について検討する。また,回路トポロジと制御という観点から利用コイルの切り替え方法についても検討する。 以上に加え,前年度に引き続き精密ステージの位置決め制御にも取り組む予定である。
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