2021 Fiscal Year Annual Research Report
活動リズムによる社会的ジェットラグの評価およびIoTによる概日リズム調整法の確立
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21J13630
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 皓紀 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | mobile Health / sleep feedback / wearable device / smartphone application |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでにIoTデバイスによって計測された身体活動データから日々の睡眠指標 (起床時刻,就床時刻,睡眠時間) を推定するアルゴリズムや,推定された睡眠データを対象者のスマートフォンアプリにフィードバックするスクリプトの開発を行ってきた. 昨年度はすでに実施済みであったパイロットスタディのデータを解析に着手することで,これまでに構築してきたmobile Healthシステムの有用性を実証するとともに,睡眠状態のフィードバックによって睡眠のタイミング (i.e., 就床時刻や起床時刻) が安定する可能性を示唆する結果が得られた. また, これらの知見をもとに申請者は実際に睡眠習慣の乱れを呈する者を対象に,介入指示を呈示することによる個人内効果の検証を行うための研究計画を立案し,その遂行に努めた.当研究では第一に就労者 (約180名) を対象に約2週間睡眠データ・心身症状データを計測することで日常生活下での睡眠習慣の実態把握を行った.これに加えて,データ駆動型のアプローチを用いることで計測データから睡眠習慣に乱れを呈する者を同定した.第二に睡眠の乱れを呈する就労者を中心に調査への再リクルートを実施し,睡眠習慣の改善・安定化を目的とした介入研究を行った.当調査では約80名の就労者を対象に約2週間の睡眠計測を行うとともに,計測された睡眠データに基づいて一定の確率で対象者のアプリへ睡眠調整指示を呈示することで,介入指示の効果を検証可能なデザインを実装している.今後は計測されたデータを用いて,特に介入直後の睡眠行動 (長さ・タイミング) の変化や介入期間を通しての睡眠の安定性や心身症状との共変的関係の評価を行い,介入の個人内効果の検証を進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今日までに至るコロナウイルスの感染拡大予防のため,生理計測などの実施が難しかったこともあり,当初の研究計画から内容の修正を余儀なくされた.したがって,今年度含め日常生活下での睡眠習慣 (e.g., 睡眠の長さ,タイミング, 安定性) の計測・制御に焦点を当てることで睡眠覚醒リズムの安定化や日中の気分・身体症状の改善を目指すよう研究目的を改訂し,その実現に向け,約200人規模での睡眠習慣の実態把握やその改善に向けた介入研究などに着手してきた. 研究計画に修正はあったものの,当初の目的であった睡眠行動やそれに伴う心身不調の改善に対する開発システムの有用性を示唆する知見を得ていることからも本研究計画はおおむね順調な進捗状況であると認識している.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までは主に就労者を対象に日常生活下での睡眠習慣の改善を目的としたmobile Health研究を行ってきており,睡眠習慣の安定化効果や身体症状への波及効果を示す結果が得られている. これまでに得られてきた知見を踏まえ,2022年度では睡眠覚醒リズムに乱れを呈する傾向にある大学生 (青年期) を中心に約25名の健常成人をリクルートし,8週間 (ベースライン:2週間, 介入期:4週間, フォローアップ:2週間) の介入研究を行う.ベースライン期間では,日々の睡眠習慣と心身症状の計測に加え,被験者の個人特性や習慣行動データの評価も併せて実施することで,睡眠覚醒リズムの乱れにつながる個人内要因の同定を行う.介入期間では申請者がこれまでに開発してきた技術基盤を活用し,ウェアラブルデバイスから得られた生体情報に基づき睡眠習慣を日々自動で推定することに加え,睡眠の乱れが検出された際には,対象者のスマートフォンに介入指示を一定の確率で送信することで日中の行動変容を促す.またこの際に,ベースライン期間で得られた知見に基づき,個人最適化された介入指示の提供することで介入効果の増大を試みる.フォローアップ期間ではベースライン期間と同様に日々の睡眠習慣と心身症状の計測を行う.本研究で得られたデータを用いて, 1).介入実施直後の気分・身体症状の変化,2). 介入期間での睡眠習慣,および気分・身体症状の動的推移,3). 介入前後の期間での睡眠リズムの安定性および気分・身体症状の変化,の3点に焦点を当てて介入効果の検討を行う.また,対象とする大学生(青年期)は一般的に生活習慣の夜型化・社会的ジェットラグの増大が顕在化する時期であることから,本介入による生体リズム機能への波及効果も併せて検証していく所存である.当研究で得られた成果は国際的な総合科学誌への投稿国内外での学会発表を計画している.
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Research Products
(1 results)