2021 Fiscal Year Annual Research Report
難治性多発性硬化症で増加する腸内細菌種, 細菌代謝機能が宿主へ及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
21J13692
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
竹脇 大貴 京都府立医科大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / 腸内細菌叢 / メタゲノム解析 / ノトバイオートマウス / 実験的自己免疫性脳脊髄炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は研究計画書に記載の項目(a~c)に沿って研究を実施し、以下の成果を得た。 (a)腸内細菌種Xの単離・培養:難治性である二次進行型多発性硬化症(SPMS)患者の糞便中で有意に増加していた腸内細菌種Xに関して、本菌種が腸内細菌叢全体の10%以上を占めることが判明しているSPMS患者の凍結糞便検体を用い、当該菌種の単離・培養を実施した。結果として腸内細菌種Xの16SrRNA遺伝子(V1-V2領域)と塩基配列が完全に一致する腸内細菌株を単離培養することができた。 (b) 腸内細菌種Xの無菌マウスにおけるEAE誘導能の評価:腸内細菌種Xを無菌マウスに経口投与し、2週間後に髄鞘抗原ペプチドであるMOG35-55で免疫することで、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)誘導能の評価を行った。菌種Xを投与した群では、無菌実験群や対照となる菌を投与した群と比較して、顕著な神経障害が出現することを確認した。 (c) T 細胞応答の解析:腸内細菌種Xの移入に伴うEAE誘導能の変化が、T細胞応答の変化によって生じる可能性を念頭に、マウスの腸管粘膜固有層や中枢神経からCD4陽性T細胞を分離し、炎症性サイトカインの分泌能の評価を行った。菌種Xを投与した群では、無菌実験群や対照となる菌を投与した群と比較して、中枢神経に浸潤するTh17細胞が有意に増加していることを確認した。 本研究が完成すれば、SPMSの病態において腸内細菌がその一端を担っていることを証明できるだけでなく、特定の腸内細菌が治療標的となることが明らかになる。これにより腸内細菌を標的とした世界初となるSPMSの治療薬の開発につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID19流行に伴う研究活動の制限があったものの、交付申請書に記載した「研究実施計画(初年度)」の全ての項目を達成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の予定通り腸内細菌種Xが腸管局所でTh17細胞を誘導するメカニズムを明らかにするための実験を進めるとともに、Th17細胞以外に神経障害の悪化に関与する腸内細菌因子について検討を進めていく計画である。
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