2021 Fiscal Year Annual Research Report
International Institutions and the Diplomacy of Authoritarian Regimes
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21J13964
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 知子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 国際制度 / 国際連合 / 中国 / 相対パワー / 国際規範 / 連合政治 / 主権 / 事務総長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際制度への参画が当たり前の現代において、国家が、如何に、自身の行動の制約となり得る国際制度にコミットしているのかを見ることが目的である。具体的には、博士論文と、共同研究にて、相対パワーと規範作り、また国家の自律性と事務総長の特徴の関係を考察した。 第一に、博論は、中国の国連での決議提案行動を定量的・定性的に分析することを通じて、国家の規範形成行動の動因が、他国と比較した際の相対パワーの大小に規定されていることを説明する。副次的には、中国とG77の連合行動も描く。学術的意義は、従来国際制度そのものの選択・変更だけが説明されてきたところ、制度内での規範作りの理論を提供することであり、また、副次的に、中国の国連外交では、対外的要素が重要であることを示す。昨今改めて機能不全が注目される国連だが、その決議が如何なる国益計算によって提起されるのかを具体的に理論化する点で、インプリケーションも期待される。 現在、1章(導入)・2章(理論)、また3章・4章(代替仮説検証)の大半の執筆を終えた。第5章(記述統計)は構築中のデータセット次第で改訂予定であり、第6~8章(決議分野別の定量・定性分析)と第9章(結論)は、今年度完成予定である。学内では、博論の3段階中2段階目の審査を通過し、プレプリント3件(英文、投稿直前の段階)、国際学会4件(MPSA、ECPR、APSA、ISA)で発表した。 第二に、鈴木早苗先生・湯川拓先生との共同研究に入れていただき、18の国際機構の事務総長の属性・制度的要素のデータセットを構築・分析し、とても深い学びとなった。IDE Discussion Paper 検討会での発表を経て、第850号にて公表した通り、事務総長の特性や自律性を計量することで、加盟国に民主的政治体制の国が多いほど、その自律性は個人属性としても制度的にも許容されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一に、博論の執筆は順調に進んでいる。国内の多くの研究者にアドバイスをいただいたこと、また後述する国際学会を契機として、ブラジル・イタリア・アメリカ・中国・ドイツの研究者から個別にアドバイスをいただけたことは、大きな意義があった。学内の審査は、3段階中2段階目を通過(2022年2月)した。第二に、博論の内容を細分化し、合計4つの国際学会で発表するとともに、投稿直前の段階の個別論文を3本執筆することができた。具体的には、その骨子(第2・5~8章該当)となる、相対パワーと国連での決議提案行動の関係を定量的に解明する研究を行い、これはプレプリント1件、国際学会1件(米国中西部政治学会MPSA)で発表した。第二に、博論の事例(第3・5~8章該当)である中国の国連での連合行動を定量・定性的に分析し、これはプレプリント1件、国際学会2件(欧州政治研究コンソーシアムECPR、米国政治学会APSA)にて発表した。第三に、博論への代替仮説(第4章該当)である主権のロジックを定性的に分析する内容は、国際学会1件(世界国際政治学会ISA)で発表し、プレプリント1件としても公表した。第三に、上述のプレプリント3件と、プレプリントにはなっていないが、執筆済・改訂中の1件(博論第3章該当)の4本の論文については、2022年度の前半に学術雑誌に投稿していきたい。 第二に、共同研究についても、鈴木早苗先生・湯川拓先生のご指導のもと、予定通りに進んでいる。新しいデータセットそのものの導入と、使用例としての、事務総長の特質と加盟国の政治体制の関係を見る分析は、IDE Discussion Paper検討会と、IDE Discussion Paper(No.850)にて発表することができた。今後は、そのデータセットを利用し、他のデータと組み合わせながら、他の理論を検証するために分析していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、博論と共同研究に加え、新たにプロジェクトを一つ加え、三本立てで進める。第一に、博論は、アジア政経学会(6月)で6章に該当する内容を発表し、またドイツ・オーストリア・スイス政治学会(DVPW ・OGPW・SVPW)合同主催の国際政治経済学会(3-Lander International Political Economy conference、6月)では7章にかかる内容を発表する。夏の終わりごろにはデータセットを完成させ、原稿全体も完成させたい。第8章に該当する内容についても、随時学会発表の機会を探していきたい。また、これらと同時進行で、上述のプレプリント3件と改訂中の論文1件について、学術雑誌(国際政治・国際制度論・中国政治の分野の雑誌)への投稿を行う。 第二に、共同研究は、発表した新しいデータセットを他のデータセットと組み合わせることで、事務総長の特性と国際機構の関係について理論化し、定量的に実証したい。このためには、まず新しい定量分析手法の習得に専念する予定である。 第三に、ライデン大学主催・欧州研究会議のファンドによるMaking and Breaking Global Order in the Twentieth Century(The Invisible History of the United Nations and the Global South)の共同プロジェクトに選抜され(滞在費と渡航費受賞)、学会(2022年10月)で発表予定である。博論の第4章(国際制度における中国にとっての主権概念の問題)から出発して、その淵源を歴史的にたどる新しい研究を始める。博論が主に胡錦涛政権期を扱うのに対し、これは中国にとっての国連の意義づけが定まっていなかった1971年から1990年を扱い、グローバル・サウスと中国の主権をめぐる理解の変遷を描く。
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Remarks |
上記は今年度発表した博士論文に関係するプレプリント3件((1),(2),(4))、また刊行された共同研究1件((3))の本文へのリンク。
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Research Products
(13 results)