2021 Fiscal Year Annual Research Report
Everyday "Written Landscape" in Germany in the first half of the 20th century. History of German language and History of Germany.
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21J13992
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
大倉 子南 学習院大学, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 文字景観 / 言語景観 / 文字選択 / 文字政策 / ドイツ文字 / ラテン文字 / タイポグラフィー / 歴史社会言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度前半(4月~9月)は日本において、書籍、新聞、雑誌等の文字の比率の実態調査を行った。この結果、紙媒体の出版物では、分野(あるいは記事内容)によって文字の意図的な使い分けがあったことが分かった。また、第一次世界大戦の際に、「戦時下におけるナショナリズムの高揚」を理由として文字変更が行われた新聞の例を見つけることができた。さらにナチ政権下での文字政策に着目してみると、当時のナチ党関連刊行物においては政策と実際の文字変更には大きなずれがあったことも分かった。このような点から、文字選択は当時の社会情勢に大きく関わるものであり、文字は単なる伝達手段ではなく、社会・政治・文化と深く関連した役割や性質をもつということが示唆される。 2021年度後半(10月~3月)は、ドイツ・ベルリンのベルリン自由大学にて研究活動を行った。大学図書館、ベルリンの国立図書館などを利用したり、ドイツ国内の文字や印刷に関する博物館に訪問したりすることで、20世紀前半の印刷業の実態を知ることができた。その傍ら、ベルリン自由大学の研究グループに参加し、口頭発表を通して、本研究の方向性について新しい視点やアイディアを得た。とりわけ、データ収集の方法論について改善案など得ることができた。また、海外の研究者との交流を通して、「文字」の捉え方について、再度考える必要があると感じた。本研究を進める上で重要となるのは、アルファベット、漢字、ひらがななどの文字種やフォント(外形)の性質を細分化し、研究対象であるドイツでの使用文字=アルファベットの特殊性について整理し直すことであると改めて認識できた。また、使用者であるドイツ人の「文字」の認識も、日本人のそれとは異なるように思われるため、再度整理し直したい。それを通して、20世紀前半のドイツにおける文字選択の要因(選択者の意図)をより理解できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度前半は、日本に滞在していたためにオンラインで入手可能な資料のみのデータ収集となった。その際、とりわけナチ時代の書籍を入手することが困難であった。また、2021年後半からドイツでの研究活動を行っているが、2021年11月頃から再び増加したコロナ感染によりドイツ全体での規制強化が行われたため、大学機関、公共の図書館などの使用が複雑化した(予約制や有効なテスト結果の提示など)。2022年3月末まで大学のコロキウムもオンラインとなり、大学教授や他の研究者と直接会うことができず、想定していたような形で研究を進めることができなかった。加えて、ベルリン自由大学の教授との面談を経て、日本で計画していた方法とは異なるデータ収集法を取ることとしたため、全体としてデータ収集が遅れている状態である。 しかし、日本では考えていなかった方法や発想、新しい文献を得ることができているので、今後、データ収集が順調に進み、必要なデータをそろえることができれば、研究が進展すると見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年4月からはドイツ国内のコロナ規制はほぼ解除され、ベルリン自由大学での対面授業やコロキウムも再開された。大学図書館、国立図書館も予約なしで自由に使用できるようになったので、残りのドイツ滞在期間中に、引き続き、図書館、文書館などに出向いてデータ収集を進める。これと並行して、大学の教授との面談および研究グループへ参加をする。7月初旬に口頭発表をする予定であるため、本研究の発展に有益となるように意見交換を行う。2022年9月以降、日本に帰国したのち、ドイツで集めたデータ資料の詳細な分析を行うこととする。その際には、①文字選択の決定要素は何か?②文字の持つ機能(役割、性質)は何か?という二つの問いに答えることを目標として研究を進める。(1)年代別-通時的考察(2)分野別-共時的考察(3)空間別-地域差および印刷物と公的空間の差異について、分析を行う。文字の機能的側面から、「文章」というテキスト内と「景観」というテキスト外の環境で、文字がどのように使われているのかを考察する一方、社会・政治・文化的側面から、どのような文字選択が行われたのかを解明する。
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Remarks |
獨協大学外国語学部ドイツ語学科「ドイツ語圏の言語」における招待講義、「ドイツの文字論争と文字景観-19世紀中葉から20世紀前半の文字をめぐる議論とその実態」、2021年6月29日
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