2021 Fiscal Year Annual Research Report
HIV感染症根治を指向したansellone Aの合成研究とその応用
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21J13995
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柳原 瑞士 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 全合成 / 構造活性相関 / Prins環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、抗HIV薬が急速に進歩してきたことで、AIDSの発症を抑えられるようになった。しかし、現行の治療法では、ウイルスを完全に体内から排除することはできず、服薬を中断してしまうと再びウイルスが増殖し始める。そのため、HIV感染症を根治するための新たな戦略として、潜伏感染再活性化剤(LRA)を用いた、Shock & Kill法が注目されている。このような背景下、環太平洋中の海綿からansellone Aやansellone Gが単離された。これら天然物がLRA活性を有し、また、これまでにない構造を有することから、LRAの新たなリード化合物として注目されている。 Ansellone Aについては、既に全合成が報告されているが、その特徴的構造であるテトラヒドロピラン(THP)環構造の形成において、収率・選択性・工程数に課題を有している。そのため、THP環を1工程かつ立体選択的に構築できれば、ansellone AやGの基本骨格を簡便に合成できるだけでなく、誘導体合成へと展開できる強力な合成法になると期待される。 そこで、ansellone A・Gの大量合成や誘導体合成が可能な新規合成法の開発を目指し研究に着手した。申請者は、採用までにansellone Aの全合成を既に達成している。そこで令和3年度、申請者は研究計画に従い、ansellone Gの合成に取り組んだ。その結果、あらかじめクロロ基を導入したホモアリルアルコールを用いたPrins環化反応により、ansellone GのTHP環を構築することで、ansellone Gの初の全合成を達成した。また、ansellone Aについて、構造活性相関研究に取り組んだ。三種の誘導体を合成し、LRA活性を評価したところ、ansellone Aの22位のアセトキシ基が活性発現に重要な役割を果たしていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究計画としては、ansellone Gの合成法の開発とansellone A・Gの誘導体合成を計画していた。その結果、Prins環化反応を用いて、ansellone Gの全合成を達成できた。また、ansellone Aについて、誘導体を合成・評価したところ、活性発現に重要な構造を見出すことができた。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
Ansellone A及びGの誘導体合成を展開し、より高活性な化合物の創成を目指す。 まずは、過去に報告されているLRAの構造をヒントにアプローチする。例えば、ナノオーダーの活性を有するPEP005の構造を参考に、ansellone Aのエノン構造中のカルボニル基を還元し、その後、エステルに変換する。 また、分子動力学を用いたアプローチも行う。Ansellone A及びGと、これらのターゲットタンパクとされるプロテインキナーゼCとの結合状態について解析し、それらに基づいた誘導体を設計・合成・機能評価する。
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