2021 Fiscal Year Annual Research Report
損傷センサー複合体9-1-1とMRNを介した新規DNA二重鎖切断応答機構の解明
Project/Area Number |
21J14041
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
達川 絢介 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | DNA二重鎖切断 / DNA損傷応答 / DNA損傷チェックポイント / ゲノム安定性 / 相同組換え |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA二重鎖切断(DSB)は大規模な遺伝子の欠失や転座につながるため、一箇所でも致死的になりうる重篤な損傷である。DSBはDNA損傷チェックポイント機構によって検知され、その下流でDNA修復や細胞周期の停止を制御する。チェックポイント機構はDNA損傷の構造によって使い分けられており、DSB末端を検出するATM経路と、一本鎖の露出を検出するATR経路がある。DSBはいくつかの機構で修復されるが、中でも相同性依存的修復は相同な配列を探索し修復を行うため、正確性が高く重要な修復機構である。相同配列を探索するためには、DSB末端からDNA二重鎖の片方の鎖だけを削り込み、一本鎖を露出させる必要がある。チェックポイント機構はこのようなダイナミックなDNA構造の変化にも対応して、損傷を検知し続けることができる。 本研究では、DSB末端を検知するMre11-Rad50-Nbs1(MRN)、一本鎖DNAが露出した領域を検知するRad9-Hus1-Rad1(9-1-1)の2種類の損傷センサー複合体が、DSBに対してそれぞれ独立してATR活性化とDSB末端の削り込みを促進に寄与するという本研究者の発見を元に、DSB時の損傷応答の解明を目指した。 まず、ATM、ATRの2種類のチェックポイントキナーゼによるタンパク質のリン酸化制御によってDSB末端の削り込みが部分的に促進されることが示唆された。一方で、9-1-1、MRNがチェックポイントの活性ではない部分で削り込みを促進する機能を持つことが示唆された。さらに、DSB末端の削り込みは特定のヌクレアーゼによって行われることが明らかになった。さらに、このヌクレアーゼに関連したATR活性化に重要な因子の存在が示唆され、削り込みの進行自体がチェックポイント活性化のシグナルとなることが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DSB末端の削り込みのメカニズムについては、チェックポイントキナーゼATM、ATRの関与や、削り込みを主に進めるヌクレアーゼの特定を行うことができた。また、損傷センサー複合体自体に削り込みを促進するような機能があることが示唆される知見を得ることができた。また、ヌクレアーゼと相互作用してATR活性化に機能する因子が存在する可能性が見出された。想定外の結果であるが、DSB末端の削り込みが単に一本鎖DNA領域を広げることでATRの活性化に寄与するだけでなく、削り込みの進行自体がATR活性化のシグナルになりうるという、ATR活性化機構の新たな要素になるかもしれない。 DNA上でのDSB応答因子の経時的な変化の解析については想定より遅れているが、実験系の構築は進んでおり、期間内に研究を遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、DNAプルダウン系を作成し、DSB時に集積してくる因子について9-1-1依存的経路、MRN依存的経路の間での違いを明らかにすることを目指す。こうして得られた結果から各センサー複合体によるDSB損傷応答を明らかにしていく。また、9-1-1、MRNがDSB末端の削り込みを促進する機構について詳細なメカニズムを調べる。各複合体の変異体の発現・精製を行い、それぞれのどの機能が削り込みの促進に重要であるか解析する。また、新たに見出された削り込みと連携したATR活性化についても、候補となる因子の発現・精製を行い解析を進めることで、DSB後の損傷応答機構について広く明らかにしていく。
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