2021 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病原細菌歯性感染による早産および胎児脳神経障害発生機構の解明
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21J14171
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石田 えり 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | Porphyromonas gingivalis / 脳組織障害 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周炎は世界で最も罹患率の高い感染症で,歯周炎妊婦の早産率は健常妊婦より7倍高いとされる。早産児は脳の発達が未熟で,認知機能障害を伴うことが知られている。早産の主な原因の1つは子宮内感染/炎症である。子宮内感染/炎症に暴露された胎児は脳神経障害をもつ危険性が高いとされる。これまでに,歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis(P.g.群)歯性感染妊娠マウスモデルを用い,P.g.感染胎盤で炎症細胞の増加と早産関連物質の産生上昇が起こり,早産が発症することが明らかにされている。その際,感染胎盤ではP.g.免疫局在が母体側の血管やトロフォブラストばかりでなく,胎仔側の血管にも観察され,P.g.が胎盤を介して胎仔に移行する可能性が示唆された。そこで,このマウスモデルを用い,母体のP.g.歯性感染が仔の行動や脳組織に与える影響およびそのメカニズムについて明らかにすることを目的とした。 研究初年度となる本年度は母親マウスのP.g.歯性感染が仔マウスの脳神経細胞障害に及ぼす影響を検討した。対照群とP.g.歯性感染妊娠モデルマウスから産まれた仔マウス(P.g.群)の生後45日目での認知機能を受動的回避能力試験にて比較検討した。また,その後脳サンプルを回収し,Nissl染色および免疫組織化学染色にて,大脳皮質や海馬領域における変化の組織計測学的評価を行った。解析にはP.g.歯性感染による脳神経障害を確認するため,両群の在胎日数の近い仔マウスを使用した。P.g.歯性感染母親マウスから産まれた仔マウスはP.g.が脳に侵入し,海馬では錐体細胞が減少する一方で,大脳皮質では軽微な神経炎症が起こることで認知機能が低下する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画初年度のP.g.歯性感染が早産仔の脳神経細胞障害に及ぼす影響の検討はおおむね検討できたと考えられる。しかし,ミクログリアを用いたin vitroの実験が計画通りに完了しなかったため,やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度と同様のP.g.歯性感染妊娠マウスモデルを用いて,シトラスペクチンやジンジパイン阻害薬の投与による母体の炎症の抑制が仔へ与える影響を検討する。また,ミクログリアとアストロサイトに変化を認めたため,令和3年度に実施できなかったミクログリアおよびアストロサイトに対してP.g.が与える影響をin vitroにて評価する。
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