2021 Fiscal Year Annual Research Report
洪水被害の確率的評価に基づく新たな洪水防御計画策定の枠組みの提案
Project/Area Number |
21J14210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹島 滉 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 河川防災 / 河道データ / グリッド変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、河川防災の根幹を担う河川整備基本方針の現行制度における課題を明らかにし、水系全体の洪水リスク評価に基づく新たな枠組みを構築することを目的としている。従来の研究では、日本全国のような広範囲での河川氾濫シミュレーションにおいては、堤防やダムといった人為的影響を非常に単純化ないし省略されており、実際の河川計画に適用することは困難だった。本研究では河道の詳細な観測データを用い、堤防及びダム操作を組み込んだ河川モデルによってシミュレーションを行うことで、水系内での詳細な洪水リスクの空間的な分布を把握し、具体的な河川防災計画立案のモデルケースを示す。 河川防災計画策定においては、どの河道で氾濫リスクが高く、それが堤防の整備等によってどのように変化するかといった情報が必要である。そのためにはモデルに合わせて簡略化された河道ではなく、なるべく実際の河道に近いデータを用いるのが望ましく、当該年度ではその収集と整理に取り組んだ。河道網の形状、合流や分流、湖やダムとの接続といった情報は、基本的な形状のデータをOpenStreetMapから抽出し、それらを分析・整理することで作成した。これに国交省の河道断面観測データを統合し、必要に応じて内挿補完等を行うことで各河道の深さや堤防高といったパラメーターを得た。 氾濫シミュレーションは、気候実験データを陸面過程モデルMATSIROに与え、得られた流出量を河川モデルCaMa-Floodに与えることで行う。河道データをこれらのモデルで用いるために、日本域高解像度水面標高データセットから各河道の集水域を求め、モデルグリッドデータを作成した。また、この特殊な形状を持ったモデルグリッドに気候実験データを変換するプログラムを作成した。これらを用いて基本的な流出計算を行い動作を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
河道データの整備において、当初利用を予定していた「国土数値情報」内に大量のエラーがあることが発覚し、その修正に取り組んだものの、それが困難であると判断してOpenStreetMapに切り替えるまでに想定外の時間を要した。 また、OpenStreetMapをベースとして作成した河道網データも、河道の接続等のエラーを除去し、河川モデルで安定して利用できる形にするのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の計画どおり、作成した河道データを用いて河川氾濫シミュレーションを行い、洪水リスク評価への適用可能性を示す。 ただし堤防モデルの高精度化など、シミュレーションの精度を上げるいくつかの取り組みは割愛することも視野に入れている。本研究の主眼はあくまで、水系全体の洪水リスク評価に基づく河川防災計画策定の新たな枠組みを提案することに置かれており、モデルそのものの精度の重要度は比較的低く、ある程度現実的なシミュレーションが可能であれば十分だからである。
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