2021 Fiscal Year Annual Research Report
Effect on seismic performance of wooden house due to cyclic deformation by moderate earthquakes
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21J14285
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 涼 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 小・中地震 / 繰り返し変形 / 木造住宅 / 地震時応答 / 性能劣化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、使用期間中に複数回受ける可能性がある小・中地震を原因とする繰り返し変形が木造住宅の耐震性能に与える影響を明らかとすることを目的としている。 本研究は、面材-軸組の釘接合部の繰り返し加力実験、耐力壁の繰り返し加力実験、小・中地震を複数回受けることを想定した住宅の振動解析の3ステップで検討を進める計画である。 準備期間中に実施した合板、OSB、MDF、石膏ボードを面材とした釘接合部の繰り返し加力実験では、木質系材料は概ね同様の荷重低下傾向を示すこと、石膏ボードは小変形においても他の面材と比較して荷重低下傾向が大きいことが明らかとなった。ここまでで得られた研究成果について、国内学会(日本建築学会学術講演会)および国際学会(World Conference on Timber Engineering 2021)にて報告し、現在英文の査読付き論文として投稿中である。 釘接合部実験で得られた結果を基に、合板耐力壁と石膏ボード壁、筋かい耐力壁に着目し、小変形の繰り返しがせん断性能に与える影響を実験的に検証した。その結果、1/200rad以下の小変形の繰り返し時においても最大で2割程度の荷重低下が確認され、これに伴う等価剛性の低下が認められたものの、最大耐力や降伏耐力、終局耐力には大きな影響を与えないことが明らかとなった。 さらに、合板壁の繰り返し加力実験で得られた結果を用いて、木造住宅が複数回の小・中地震を経験した後に大地震を被災する場合を想定し、小変形の繰り返しが木造住宅の地震時の応答変形に与える影響についての解析的な検討をはじめており、十分な耐力を持った木造住宅の場合、小変形の繰り返しが大地震時の応答変形に与える影響は小さいことが示唆された。 ここまでの実施内容の一部は2022年3月の日本建築学会中国支部研究発表会で発表した。また、2022年度の日本建築学会学術講演会でも発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
壁実験として必要なデータは、合板壁、石膏ボード壁、筋かい壁を抽出することによって概ね予定通り得ることができたと考える。これは、ウッドショックによる木材価格の高騰を受けたため、計画時と比較して製作可能な試験体数が減少したため、接合部の実験より合板壁と同様の傾向を示すと考えたOSB壁、MDF壁を省くことで対応した。 また、2年目に予定していた解析的検討についても順調に検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
接合部実験で得られた結果より、合板やOSBなどの木質面材を採用した釘接合部について、小変形の繰り返しによる荷重低下傾向は概ね同様であり、同様に評価可能であることがわかった。一方で、一般的に住宅に採用される石膏ボードについては小変形においても荷重低下傾向が他の木質面材と比較して大きいことがわかった。壁量計算では、石膏ボードは存在壁量として算入しないが、余力としての役割が大きいことから繰り返し小変形の影響を明らかとすることが必要であると考えている。耐力劣化の度合いによっては、大地震時に期待していた耐震性能を発揮できない可能性がある。 今年度実施した耐力要素を合板のみとした住宅の解析では、十分な耐力を持った住宅の場合は、大地震時の応答変形に小変形の繰り返しが与える影響が小さいことが明らかとなった。この検討に、耐震要素としての石膏ボードの影響を建物の全体の耐震性能のうちに石膏ボードが占める割合としてパラメータに加えた解析をおこなう予定である。 また、小・中地震時の応答変形が大きいほど耐力劣化が大きくなるため、現行基準を満たさないような耐震性能が低い木造住宅を対象とした振動解析も実施する。 得られた成果については、引き続き関連学会で発表し、査読付き論文に投稿する。
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