2021 Fiscal Year Annual Research Report
To understanding of molecular mechanisms of formation of barrier to radial oxygen loss using wild rice spesies
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21J14394
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
江尻 真斗 福井県立大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 野生イネ / 耐湿性 / スベリン / 酸素漏出バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素漏出バリアは耐湿性に重要な形質である。しかし、その分子メカニズムは未解明な点が多い。モデルとして扱われる栽培イネは、過湿ストレスを受けることで酸素漏出バリアを誘導的に形成する。これまでに我々は、南米に分布するAAゲノム種である野生イネOryza glumaepatulaの中から過湿ストレスを受けなくても恒常的に酸素漏出バリアを形成する系統を見出した。そのうちの1系統であるIRGC105668系統には既に栽培イネに染色体の一部を導入した染色体部分置換系統群が作出されている。本研究では、この系統群を用いてバリア形成の誘導性の違いに着目して遺伝子発現を比較解析することで、酸素漏出バリア形成に重要な遺伝子群の特定を試みる。 恒常的酸素漏出バリアの形成が量的形質の場合は、恒常的バリアを形成する染色体部分置換系統は複数選抜できると予想される。そのため、バリア形成の検出には定量的な評価法が必要とされる。当初の計画では、特殊な酸素電極を用いて根からの酸素漏出量を計ることによりバリアの強度を定量的に評価する予定であったが、対象としている種子根の扱いが難しく、酸素電極を用いた評価は技術的に不可能になった。そのため、評価対象を酸素の漏出量ではなくバリアの主成分とされる疎水性ポリマーのスベリンの蓄積量に切り替え、染色法を用いた新たなスベリンの定量法を確立した。現在は大幅に進展が遅れているが、恒常的酸素漏出バリアを形成する染色体部分置換系統群の選抜に取りかかっている。今後は選抜により得られた恒常的バリアを形成する染色体部分置換系統群と栽培イネの網羅的遺伝子発現を比較解析することにより、バリア形成に重要な遺伝子群の特定を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述のように、当初は酸素漏出バリアの形成は特殊な円筒型の酸素電極を用いて酸素漏出量を定量することにより評価する予定であった。しかし、対象としている野生イネの種子根の側面に形成される側根の発達が想定よりも著しく、円筒に根を通す酸素電極の使用は物理的に難しくなった。そこで、評価対象を酸素の漏出量ではなくバリアの主要成分とされるスベリンの蓄積量に切り替え、当該年度は染色法を用いた新たなスベリンの定量法の確立に着手した。そのため、染色体部分置換系統群の選抜に取りかかることは遅れてしまったが、側根の発達具合に関係なく染色体部分置換系統群を選抜できる新たな評価系を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度はまだ残っている染色体部分置換系統群の選抜を終わらせることを最優先に考え、恒常的酸素漏出バリアを形成する系統(系統X)を急ピッチで特定する。その後、系統Xと栽培イネを栽培イネがバリア形成を誘導できない好気的な環境で栽培し、RNA-seqによりバリア形成部位である根の基部における網羅的な遺伝子発現の比較解析を行う。これにより既知の候補遺伝子98個のうち、栽培イネでは発現せず系統Xで特異的に発現している遺伝子群を酸素漏出バリア形成に重要な遺伝子群として特定できる。当初の予定ではその後に、特定した遺伝子群の発現量をqRT-PCRにより発達ステージ別および組織別に調べ、遺伝子発現のネットワークを詳細に調べる予定であった。令和4年度中に計画書の内容全てを完遂するのは現状難しいと考えられるが、可能なところまで研究を遂行し酸素漏出バリア形成の分子メカニズム解明に臨む予定である。
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